大事な教え (3)【萩原研二/松田陣平】

疑惑 ページ15

そして、4ヶ月近くが過ぎた10月。

AがAttraente (アトラエンテ)の美容セミナーに参加してから、
新たな成りすまし詐欺の被害は3件。

Aが睨んだように、
これまでの被害は全て、
被害者自身、あるいは被害者の妻が、
Attraenteの商品の利用者、あるいは美容セミナーに参加したことがある人物だった。
家族の個人情報を記入したかは、全員がはっきり覚えていた訳ではないが、
この事実から、1つの疑惑が持ち上がっていた。


Attraenteの美容セミナーの参加者と、
成りすまし詐欺の被害者との繋がり。


おそらく、美容セミナー参加者の顧客情報が、
何らかの形で盗まれ、成りすまし詐欺グループに流れているという疑惑。

あるいは、Attraenteと成りすまし詐欺グループは直接繋がっている、ということだ。



「直接調べていくと、どちらかに逃げられる可能性がある…。
この可能性が正しいとして、まずはAttraenteの顧客情報を入手する必要が――」

「防犯カメラの映像と被害者の証言から掴めた受け子の足取りから、
奴らが出入りしていると思われる米花町のビルは――」

険しい表情で言葉を交わす、保科、三橋の2人。


『それと、Attraenteの販売サイト、セミナー参加のページの入力情報を辿ると、
やはり、ここ数ヶ月の被害者は全て、サイト内のフォームで家族構成の情報を記入しているようですね。
ここから個人情報が漏れていると考えて良さそうです。』

「…片桐。また勝手にハッキングしたのか」

『ハッキングというか…』

「そういうことは生活安全課のサイバー犯罪係か、サイバーセキュリティ対策本部に正式に頼むようにといつも言っているだろう」

捜査とはいえ、
正式に二課の刑事が手を出すべきではない領域。
Aの行動に顔をしかめる保科だが、
有益な情報に再び真剣な表情になる。

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