犯人との対峙_3 ページ44
『え…』
驚く葵だったが、
松田は、葵の前に拘束された2人と、ナイフを持つ男を見て、
ゆっくり銃を構えた。
「ナイフを下ろせ」
松田、と、目の前の永澤に交互に目を向ける葵。
永澤は、ナイフを下ろそうとはせず、
相変わらずの冷ややかな目を携えていた。
「今度は、警察…ですか」
永澤はそう言い放つと、
何も映していないような、
冷たい目を携えて、
田村の頭上にナイフを振りかざした。
『…！』
振り下ろされようとする腕に、
とっさに葵が両手でしがみつく。
犯人と葵の距離が近すぎるため、
松田は引き金を引けず舌打ちをした。
いや、そうでなくても、拘束された2人に当たる可能性を考えれば、
発砲は難しい状況だ。
「放せ…！」
構わずナイフを振り下ろそうとする永澤に、
『…この子は！』
葵が、低いトーンで叫ぶ。
『この子は、
何もしてないのに、恐怖を与えられて、
挙句に、
殺されるんですか…？』
永澤の腕を両手で掴みながら、
女の子、秋野の娘の方に目を向ける葵。
『理不尽に、
目の前でこんな恐怖を与えられて、
怯えたまま、
挙句、殺されるんですか…？』
両手に必死で力を入れながら強い口調で続ける葵だが、
その表情は冷ややかだ。
『貴方が怒りをぶつけるべきは、この男と…
秋野先生本人、じゃ、ないですか…？
この子に、
こんな、恐怖を与えるのは、
理不尽、じゃないんですか…？』
(アイツ、何言ってんだ…)
松田が銃をホルスターに収めながら、ジリ、と2人の方へ向かう。
「う、うるさい…！」
力を強めた永澤の腕に、葵の両手が振り切られそうになる。
カラァン…
体制を崩した葵の足が当たり、
近くに立てかけてあった小さな金属材が倒れた。
チッ、と舌打ちをして、松田が一気に距離を詰め、
永澤の腕へ掴みかかる。
そして、
離れてろ！という言葉とともに、葵が瞬時に手を離した瞬簡、
松田は永澤を思い切り投げ飛ばした。
床に叩きつけられながら、小さなうめき声を上げる永澤。
その横で、投げ飛ばした反動からか、
「っ…」 と、同じく小さく呻いて松田が座り込んだ。
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作者名：white12
| 作成日時：2019年7月5日 13時
