逃れられない想いとともに。(3)【松田陣平】

理不尽な復讐 ページ37

『…あ、白石さん。お忙しいのにすみません。
ちょっと調べてほしいことがあるんですが…』

「結城先生？
今、色々と騒ぎになっているんですが、大丈夫ですか…？
それと交通がずいぶん乱れていますが…」

『あ、あの、すみません。出来れば急いで頂きたいんですが』

おおかた、
予告状についてTVのニュースで大きく騒がれているのだろう。
白石は焦ったような心配そうな声で葵を気遣ったのだが、
当の葵には余裕がない。

「は、はい。すみません。何を調べれば良いですか…？」

白石にお願いしたのは、
数年前に起きた誘拐事件。
東都海浜公園近くの港付近で、
誘拐された女の子が遺体となって発見されたものだ。

誘拐事件について、
そして、確か女の子は”東都海浜公園”付近で見つかった、とされていたような…
というやや曖昧な記憶の元、先ほど、ネットで検索をしたのだ。

ネット上の新聞記事によって、
それは5年前に起こった事件だった、と確認した。
当然、まだ東都ファンタジーランドが建設されていなかった頃だ。

そして、被害者の女の子は、
4歳の、永澤 由紀ちゃん、だった、ということ、
それと、犯人である”田村”の顔写真。
そして、発見されたのは"東都海浜公園近くの港"、
つまり、ここの事だろう。


『その、事件内容詳細と...
裁判記録について調べて欲しいのですが』

「わ、分かりました。急いでいるんですよね。
分かり次第すぐに連絡しますね」

普段とは違う、焦った様子の葵に若干戸惑いながらも、
白石は特に深くは聞かず、電話を切った。

葵自身、先ほど検索した内容の詳細を確認しながら、
スマホのディスプレイを眺める。

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