久々の稽古_2 ページ25
「あ、結城さん」
道場を出て駅へ向かう道で、聞き慣れた声がする。
声の方を振り向くと、神山がいた。
『神山くん？…買い物？』
「あ、この近くのPCショップに用事があって。
結城さんは？まさか、仕事、じゃないですよね…」
休日に事務所になんか来てませんよね、
というような表情でニヤリと笑う神山。
『違うわよ。私もちょっと、用事があって。』
「…道場、ですか？」
『え？』
道場に通っていることは、神山には話していない、はずだ。
不思議そうな顔をする葵に、神山が得意げに続ける。
「結城さん、合気道やってるって、前に白石さんが言ってましたよね。
確か、結城さんが通り魔に襲われかけた時…。
あと、それ、道場着の袋…かなって。
ちょっと汗掻いた後みたいだし。
それと、この近くに確か道場ありますよね」
神山が指差した葵のカバンからは、
白っぽい布製の袋が覗いていた。
そして、稽古後汗を拭いたとはいえ、
髪や額など、ややしっとりしているのは否めない。
『…その通り、よ。良く見てるわね』
「人間観察、というか…
しっかり相手をみることって、大事、ですよね？」
コンビニ強盗事件で、木本とのやりとりで、
神山が改めて葵から学んだことだ。
得意げなドヤ顔を向けながら、
神山は、あ、じろじろ見てすみません…と、笑って謝罪した。
『ううん。さすが、って思ったの』
「ありがとうございます！お世辞でも、素直に受け取っておきます！
…あ、そうだ。
あの、製薬会社の部長、えっと、佐伯さん、でしたっけ。
案件を抱えてる間、…大丈夫でしたか？」
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作者名：white12
| 作成日時：2019年7月5日 13時
