喫茶店ポアロにて_6 ページ22
「おい、いつまでもそこにいられると迷惑なんだが」
先ほどの爽やかな笑顔はどこに行ったのか、
苛立ちを浮かべたような表情で、安室がキッチンの隅を睨む。
「…悪りぃな。助かった」
うねる髪の毛が見える。
そこにしゃがんでいたのは、松田だった。
「…なんなんだ、お前。」
「いや…
それはこっちのセリフなんだが。
こんなところで喫茶店の店員さん、かよ。
安室、
探偵…、ね。
潜入ってやつか。」
立ち上がりながら話す松田を、″安室″がギロリと睨みつける。
「キッチンに隠れさせろ、だと?全く…ふざけるなよ、松田。
梓さんやマスターがいなかったから良かったものの…」
「いや、そもそもお前に会うなんて考えてねぇだろ。
ありえねぇ爽やかな顔で見慣れた奴にいらっしゃいませって言われて、マジでビビった。
降谷、ある意味お前が悪い。」
もう客のいなくなったポアロで、ぶつぶつと会話を交わす2人。
そう。
葵がポアロに現れる少し前に、
松田はここを訪れていた。
昨日の葵の様子が気になったのだ。
チラリと窓から店内を見ると、
サラリーマンが一人いるだけのようだった。
“なんか、ストーカーみたいですね…”
昨日葵に言われた言葉を反芻する。
(様子を伺うには店内は狭そうだが、カウンターの端なら…)
はぁ…、と自身の行動に自嘲しながら、とりあえず、といった様子で初めて足を踏み入れる店に入ると、
見知った、いや、見知りすぎた人物に遭遇してしまった。
笑顔を崩さない安室に、
無理やり店から追い出されそうになったが、
カラン、と音を立てて店内へ入って来ようとする葵の姿を見て、
なかば無理やりにキッチンへ隠れた、という訳だ。
64人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2019年7月5日 13時