特定されたストーカー ページ14
葵はスマホを片手に、周囲を警戒しながら路地裏へと向かった。
ある人物の番号をディスプレイに映し、発信ボタンをタップする。
RRRRR…
数回のコール音が鳴る。
周囲から音は…
聞こえない。
電話の相手には繋がらず、一旦電話を切る。
そして、もう一度発信ボタンを押す。
RRRRR…
「…は、はい」
今度は繋がった。
『あ、すみません。休日に。
今、大丈夫ですか?』
「あ、は、はい」
電話の相手は、少し焦った様子だ。
『少し、お伺いしたい、と言いますか、お伝えしたいことが出てきまして。
来週の打ち合わせ、明日に変更出来ますか?』
そう伝えると、電話の奥で聞き覚えのあるメロディが微かに聞こえた。
「あ、明日ですか?」
『なるべく早い方が良いかと思いまして…』
その人物への接触は、ある種の推測からの賭けではあったが、
相手の焦ったような様子。
そして、
先ほど聞こえてきたメロディ。
推測はさほど外れてはなかったようだ、
と考えながら、葵は会話を進める。
「あ…わ、分かりました」
『では場所は…』
と話を進めながら、
くるりと方向を変え、
ある方角へと足早に向かっていく。
自宅付近の小さなコンビニ。
先ほど電話口で聞こえてきたメロディは、このコンビニ特有のもので、
葵も時々立ち寄る店だ。
『そうですね…
では、明日の15時、米花町にある喫茶店ポアロというお店はいかがですか?』
そう話しながら、コンビニへと足を向ける。
そのまま、店の前の道路でスマホを耳に当て通話中の男の方へ向かった。
『…、偶然です、ね?』
「へ…?」
裏返った声でこちらを振り向いたのは、
製薬会社のクライアント、佐伯だった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月5日 13時