逃れられない想いとともに。(3)【松田陣平】 (ページ13)

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非通知着信_3 ページ13

『あ、私です。すみません…』

葵がカバンからスマホを取り出すと、
ディスプレイに映し出されるのは”非通知”の文字。

(……。)

葵の表情が曇る。
いや、視線を鋭くさせつつ何かを思案している様子だ。

「…どうした？」

『いえ。』
キョロキョロと、葵はゆっくり周囲に視線を向ける。

2度目に写真が送られてきてから、
何か他のストーカー的行為が始まるかもしれない、と警戒していた葵だが、
明らかにつけられている様子はなく、
電話がかかってくるなど、そうしたこともなかった。

『…はい』

一旦呼吸を置いて、葵が電話に出ると、
受話器の向こうはしばし無言だった。

(…無言電話？)

そして、

「…その男、だれ…ですか？」

ボイスチェンジャーで変えたような奇妙な声が聞こえた。

『…!?』

鋭い目をしながら、再度周囲を見渡す葵。

そのまま、電話は切れた。

(…見られてた?
ということは、近くに…)

瞬きを繰り返しながら、厳しい表情でスマホを見つめる葵に、
大丈夫か？と松田が声をかけるも、

用事を思い出した、と葵はそのまま自宅とは別方向へ歩いて行った。

「…」

松田からすると、
葵との身長差から、ちらりと視線を送るだけでディスプレイが見えてしまう。

(非通知、ね…)

何か変なことに巻き込まれてるんじゃねぇだろうな。

深入りしない、というあの考えはどこに行ったのか。

松田もまた、厳しい表情を浮かべながら、
路地に消える葵を見つめていたが、
はぁ、と息を吐くと、同じ方向へ歩き出した。