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大事な事だから、もう一度言おう。
人の縁は、大切にしておかなければならない―――。
アイス珈琲を片手に大人達の話を聞き流しながら、一希は隣でスマートフォンを弄る理玖に視線を向ける。
先程から熱心に画面を見つめ、誰かと連絡を取っているようだ。
「急用か？」
「いや―――彼女。別れようかと思って」
「ああ、かのじょ――― って、待て待て！色々爆弾落としたな、おい」
さらりと聞き流すはずの親友の言葉には、突っ込みどころが豊富にある。
慌てる一希に反し、当の
それどころか、明日の天気予報でも見ているかのような落ち着き様に、片手で頭を抱えた。
「別れたの？ってか、その割にはあっさりしてないか？」
「まだ別れてはないよ。
それを言うなら俺は、一希が
――― あっさりしてんのは、一希の方だろ?
理玖は、不服そうに視線を逸らせた。
あれは、高校1年の夏休み終わりだったか。
バイクイベント最盛期で練習に追われていた時で、元彼女と別れた事を親友に伝えておらず、
年明けに近況を聴かれとっくに分かれていると報告すると、
花結町にある恋木神社を紹介された。
「あ―――。言わなかったっけ？引っ叩かれたって」
「いや、初耳。アイツ叩いたりする奴だっけ？ちなみに叩かれた原因なに？」
「『私とバイクとどっちが大事』と聞かれたから『バイク』と答えたら フられた」
「そりゃ お前が悪いわ。もう２・３発叩かれとけ」
「ひでぇ……」
(確かに―――…… 酷い奴だと、自覚はある。俺自身も)
元彼女には申し訳ないと、今なら思う。
だからこそ、次の恋愛は、きちんと大事にしようと学んだ。
そう言えば、神社に参拝したこともまだ、理玖に伝えていなかったか―――
一希が口を開きかけると、理玖は再びスマートフォンに視線を向けた。
その表情はどこか寂しそうで、
参拝に行ってきたと軽口を話せる雰囲気ではない。
「迷ってんの？」
「まぁ。２年だし―――付き合ったの」
理玖が彼女と交際を始めたのは、中学の時。
一希と同じくクラスで恋愛事が流行っていた時だ。
全員同じ中学の為、当時は理玖達とダブルデート的な事もしており、
理玖の彼女の事は、一希もよく知っている。
一希とは違い、理玖が彼女の事を大切にしていた事も―――知っている。
だからこそ、軽口は言えない。
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