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「うーん。身近にあって何でも相談できるところ……かな?」
科に縛られる事なく、その人自身を全体的に診て不調の原因を探る。
原因がはっきりすれば、専門の科に紹介を行い、より高度な治療に繋ぐ……
所謂医療の玄関みたいなところだと、律は高校生の僕にも分かりやすい言葉で説明してくれた。
律と話しているうちに、僕は昨日感じていた警戒心がすっかり絆されている事に気が付いた。
人見知りのある僕にとって、知らない年上の男の人に自分から話しかけるなど、極めて珍しい事だ。
そう―――知らない人、ではなかったっけ。
青柳律……青い瞳の、不思議な先生。
「律君、古先生がやってた“ひだまりクリニック”をまた始めるのでしょ?」
世間話をしていた女性達の話題が、突然としてこちらに向く。
律は彼女達にも同じ笑顔を向け、やんわりと否定した。
「流石に僕一人でクリニックは無理なので、もう少し勉強しようと思います。
だけど、こうして皆さんに集まってもらえる事は、古先生の希望だから……
この場所はサロンとして開放しようかなと」
三つのテーブルに分かれて、それぞれ雑談に花を咲かせていた人たちが、水を打ったように静まり返り、律の言葉に耳を傾けた。
誰もが柔らかな笑みを浮かべていて、まるでそこに、僕が見た事ない“古先生”がいるかのような不思議な空気に包まれた。
「なんて―――僕が赤石さんの稲荷寿司や森下さんのお漬物を、またご相伴に預かりたいんですけどね」
あはは
と、笑いながら頭を掻く律に、集まった人達から笑いが湧き起こる。
空気が、一瞬にして和やかに揺れた。
「そんなの、いつでも持ってきてあげるわよ!」
「時々顔出して掃除もしてあげるわ」
「先生は先に嫁さん見つけにゃなりませんな!」
「古先生―――ここに町の人が集まるの、好きだったもんね……」
こうして、昨日まではボロ家だったこの場所は、町の人達の提案もあり
“ひだまりサロン”
と名付けられることとなった。
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シオン(プロフ) - この囲碁の影の人は誰か凄く気になります。 (2022年9月27日 7時) (レス) @page49 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 自分のキャラも登場させてくれてありがとごさいます。 (2022年9月19日 22時) (レス) @page38 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
スピカ(プロフ) - 風を出演させて下さりありがとうございます!こんなにも早くサロンのお手伝いができるとは思わなかったのでとても嬉しく思います!風の態度や話し方、律さんへの接し方と日向くんへの接し方の温度差も私が希望通りです!ありがとうございます! (2022年9月19日 16時) (レス) id: 64ca5697bb (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 律さん、風邪大丈夫になるのですか!心配です。 (2022年9月19日 8時) (レス) @page30 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
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