Karte.3 ひだまりクリニック ページ7
男性陣が痛んだ外壁や屋根の修繕をしている間、
集まった女性達はボロ家の中の掃除を担当した。
結局、近所のお節介おばさんに引きずられるように家の中に入った僕は、
大きなテーブルの前に座らされ、それぞれが持ち寄ったと思われるようなペットボトルのジュースや紙コップ、ちょっとしたお菓子等でもてなされる。
家主(?)がまだ外に居るというのに、
たまたま通りかかった僕がこんなところでもてなされてもいいのだろうかとの居心地の悪さから、視線をあちらこちらに揺蕩わせた。
初めて見るその広い空間は、僕が想像していたよりずっと明るかった。
大きな窓は全て解放され、心地よい風と太陽の光が屋内を吹き抜ける。
だが数十年放置されていただけあり、中はまだ埃っぽさが残っていた。
教室のような広間にはくたびれた椅子が沢山並び、中央に大きな丸い机が3つおかれている。
その奥には胸程の高さのカウンターが仕切り、壁には幾つもの棚が設けられていた。
外から見れば小さな平屋だと思っていたが、カウンターの横に扉があり、奥行きにもまだ部屋があるようだ。
また、広間は吹き抜けとなっているが、カウンターの向こう側は少し天井が低くなっており、上にロフトのようなスペースがある事を想像させる。
知っている人もちらほらいるが、僕の知らない人もいて―――
どうやってこれだけの人が集まったのだろうかと不思議に感じていた。
そして、先程から父達が律の事を“先生”と呼ぶのも気にかかる。
この空間だって、僕たちが住む一般的な家とはかけ離れていた。リビングというよりはむしろ―――
「診療所の待合みたい」
僕がぼそりと呟くと、家主である律が壁際から椅子を寄せてきて、僕の隣に腰掛けた。
「あー。やっぱりそう見えるか」
「やっぱりって?」
周りに知り合いの顔があるせいか、彼に対する不信感よりも好奇心の方が勝った僕は、隣に腰掛け紙コップを手にする律に問いかけた。
どうやら彼も、お節介おばさんに着席を促されたようだ。
あれよあれよという間に、律の前にもウーロン茶のペットボトルと、誰かが差し入れたであろう稲荷寿司が並ぶ。
僕は完全に、帰るタイミングを失ってしまった。
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シオン(プロフ) - この囲碁の影の人は誰か凄く気になります。 (2022年9月27日 7時) (レス) @page49 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 自分のキャラも登場させてくれてありがとごさいます。 (2022年9月19日 22時) (レス) @page38 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
スピカ(プロフ) - 風を出演させて下さりありがとうございます!こんなにも早くサロンのお手伝いができるとは思わなかったのでとても嬉しく思います!風の態度や話し方、律さんへの接し方と日向くんへの接し方の温度差も私が希望通りです!ありがとうございます! (2022年9月19日 16時) (レス) id: 64ca5697bb (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 律さん、風邪大丈夫になるのですか!心配です。 (2022年9月19日 8時) (レス) @page30 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
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