Holistic Blue

└ ページ30

結局、佐々木さんは自己判断の抗炎症薬を購入せず、
薬剤師の勧めに従い今から整形外科を受診する事となった。

確かにロキソプロフェンナトリウム水和物は本来
頓用(一時的)で使用されるものであり、
高齢者が常用するにはリスクがある。
血液状態を含めてきちんと管理した方が良い。

じっと見つめていたのがバレたのか、
佐々木さんの対応を終えた薬剤師が律に気付き、睥睨を向ける。


「―――……何か？」

「いえ！何も―――。とても分かりやすい説明だと聴き入っていました」

「―――はぁ」


薬剤師は、まだ会計が終わらない律の買い物かごの中を見ると、
一層不審を露わにした。


(あはは。……ですよね)



「お会計、5万6千220円です……」

「はーい」


レジの女性が支払額を伝えると、
隣のレジに並んでいた男性までもが訝し気な視線を律に向けた。


(朝のドラッグストアで聴く金額じゃないよな……)


乾いた笑いを浮かべながら大きなレジ袋を二つ受け取ると、
律はそくさくとドラッグストアを後にした。



バイク後部のキャリーに何とか購入した品を詰め込むと、
一緒に買っていたペットボトルの水で解熱剤を内服する。

引っ越しの際に必要になるかと、大きめのキャリーを付けておいて正解だった。
だが、

バイクの積載量には限界がある為、
今後を有事を考えるとやはり車は必要かもしれない。


(今度、車屋さんに見に行くか―――4輪のほうは、あんまり詳しくないんだけどなぁ)


見上げた空は、雲の流れが速い。
今日は天気が崩れるかもしれないから、日向は早めに帰した方が良さそうだ。




乾燥した口腔内に、冷たい水が染み渡る。

500mlの水を一気に飲み干すと、律はバイクに跨った



少し湿気を帯びた静かな空に、バイクのエンジンが 重たい音を轟かせた。


・
・
・

Karte.9　新しい風　→←├

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す