Holistic Blue

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佐々木さんが
「腰が痛いの、これと同じ物を下さる？」とレジの女性店員に見せると、
案の定、店員は少し困った顔を浮かべて奥へと消えた。

恐らく薬剤師を呼んできているのだろう。




ロキソニンは医療用医薬品の為、処方箋と薬剤師の薬事説明がないと受け取れない。

同じ成分(ロキソプロフェンナトリウム水和物)を配合したスイッチOTC薬(一般用医薬品)として市販されている物もあるが、
第一類医薬品の為必ず薬剤師から書面で情報提供を受けることが義務付けられているのだ。

今後は第2類医薬品への分類も検討されているようだが、
使い方を間違えれば副作用が強く出現したり、最悪胃に穴が開く(薬剤性胃潰瘍)事もある。



対して律が購入しようとしているアセトアミノフェン系の薬剤は
第2類医薬品の為、薬剤師による説明は 努力義務 とされている。

基本は、こちらから情報提供を求めない限り
薬剤師でなくてもレジを通してくれるのだ。




まぁ。

急ぐわけでもなければ、早く戻って日向にうつすのもよくない。

それにしても、体調が悪いせいか今日は、
　 余計な事に頭が回る日だ―――。





「次の方、どうぞ」


明るい声に誘導され、隣のレジで先程の女性店員に、山のように医療・衛生用品が入った買い物かごを渡すと、
妙な表情を向けられた。

朝一から男が一人、家庭用とは言えこれだけの医療機器や衛生用品を買い込んでいれば、
何事かと不審に思われても仕方がない。


(酸素飽和度測定器なんて必要とするのは、
　呼吸器疾患や循環器疾患を持つ人か登山家くらいで、
　普通の人はあまり買わないからな……)


訝し気な視線を受けながら会計を待っていると、
隣では、カウンターから出てきた薬剤師らしき女性が、
腰をかがめて丁寧な説明をしていた。

腰が痛いからと、家にあった家族の薬を飲んでいたが、
薬が切れた為、同じものが欲しいという。

薬には多かれ少なかれ副作用が存在し、
年齢や代謝機能、飲み合わせや治療によって効果や副作用の現れ方が異なる。
家族の薬を自己判断で使用するのは危険な行為だ。

対応する薬剤師は、高齢の佐々木さんが理解できるよう視線を合わせ、
専門用語を分かりやすい言葉に砕き、ゆっくりと説明を行っている。



(若干、言い方と表情はキツく感じるが……)

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