└ ページ18
・
暫くして町の人達が集まると、瞬く間にサロンは賑やかさを取り戻した。
外では草刈り機の騒がしい音が響き、家の中ではおばさん達の笑い声が響く。
父に頼んで水彩絵の具を持ってきてもらった僕は、
その日の作業には参加せず、集まった人達の楽し気な声を聴きながらスケッチブックに色付けを行った。
人の声や生活音が、僕に陽だまりの”色”を教えてくれる。
思ったままに、感じたままに、僕はスケッチブックの上に絵具を重ねた。
夕刻には絵具も乾燥し、作業を終えた町の人達がサロンのテーブルに集まる。
仕上がった絵を見た大人達が、珍しそうに僕の絵と顔を視線で往復させた。
「これ、日向が描いたのか?」
「凄いじゃないか、日向君!」
「学校の美術部って言ってたっけ?やるじゃない」
「まって、確か家に丁度いい大きさの額があったから、明日持ってきてあげる」
「良いわねぇ!サロンが明るくなった感じがするわ」
褒められることにも慣れておらず、口々に上がる称賛に気恥ずかしさを覚えた僕は、
黙ったまま下を向く。
そんな僕の肩を、律がぽんと叩いた。
「ありがとう、日向。凄く嬉しい!」
満面の笑みを浮かべた律に背中を押され、僕はゆっくりと顔を上げる。
誰かに褒められることが、こんなに嬉しいなんて。
誰かに認められることが、こんなにもくすぐったくって―――心地いいなんて。
お節介なおばさん達に背中を叩かれ、流石俺の子だと訳の分からない事を言いだす父に頭をもみくちゃにされた僕の心は、
陽だまり溢れるこの絵のようにとても暖かかった。
律の言葉が僕に、自信をくれたんだ―――。
・
・
・
6人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シオン(プロフ) - この囲碁の影の人は誰か凄く気になります。 (2022年9月27日 7時) (レス) @page49 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 自分のキャラも登場させてくれてありがとごさいます。 (2022年9月19日 22時) (レス) @page38 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
スピカ(プロフ) - 風を出演させて下さりありがとうございます!こんなにも早くサロンのお手伝いができるとは思わなかったのでとても嬉しく思います!風の態度や話し方、律さんへの接し方と日向くんへの接し方の温度差も私が希望通りです!ありがとうございます! (2022年9月19日 16時) (レス) id: 64ca5697bb (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 律さん、風邪大丈夫になるのですか!心配です。 (2022年9月19日 8時) (レス) @page30 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ