暁天の星４ (ページ35)

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extras…θ：デュオニソス　前編　④ ページ35

(ここまで酔いつぶれていたら、どうせ陸翔の介抱に呼ばれる。ならば最後までいた方が往復の手間も省けるか…)

半ば諦め加減で陸翔を見ると、隼の視線に気づいたのか、彼はグラスの中の酒を一気に口腔内に流し込み、にんまりと微笑んで見せた。

「俺も―――今日は寄る所があるから早めに切り上げるよ。“ネーベル”も気を付けて帰れよ？」
「？！！」

思わず声を挙げそうになるのを、喉元で抑えた隼。

(送らなくていいって事か？)

それならば厄介事が無くていい。二言を言われる前にさっさと帰るのが正解だ。

「有難うございます、リリン様―――では、私は先に上がりますね！」
「ええ、有難う！気を付けてね？」
「はぁい！」

短く挨拶を終え、店を出る隼。
“彼女”が帰り支度をしている間にも、陸翔はカウンターを立ち上がり支払いを行っていたことから、
本当に切り上げる様子だ。

店の外に出た隼は変装を解き、店から出てくる陸翔を待ち伏せた。

「ん？まだ帰ってなかったのか―――？」
「今日は呼ばないんですね……」
「なんだ、俺の相手をしたかったの？」「―――言ってないし」

隼は短くため息を落とした。本当に、介抱させる気がないなら帰るだけ。面倒事には巻き込まれたくない。

「お帰りも、お気を付けください―――」

そう言うと、くるりと陸翔に背を向けた。

「おう！オマエもな―――あぁ、待てハヤト」

怪訝そうに、振り向く隼に、陸翔は30㎝程のボトルを取り出し渡した。

「何ですか？これ―――」
「貰いものだが、“甘い”らしいからお前にやろう。アリアと一緒に飲めばいい」
「――？はぁ、有難うございます…？」

陸翔は後ろ手を振って闇に消えていく。
これから行くところがあると言っていたが、
こんな時間からいったいどこに行くというのだろうか―――

(―――まぁ、いいか…それより俺も、早く帰ろう)

陸翔に貰ったボトルを片手に、東の空が薄っすらと明るい街を抜け帰路についた。

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