第２夜：info. �� ページ4
朝の柔らかい光が、木陰を落とす。
木の上で休む隼の元に、部下の一人が声をかけた。
「こんなところに居たのか、影！」
衣擦れの音もさせず、静かに深紫の長髪が身体を起こす。
「主からの命が下りましたか？」
「違う、なんでも仕事に結びつけるな！」
慌てて両手を振ると、声をかけた男は「真面目か」と短くため息をついて隼の休んでいた木を見上げた。
「影が掴んでいた情報…デスロードに人間が迷い込んでいるというアレ、
裏付けが取れたから報告に来た」
デスロード(死神の里)―――
隼達が住まうこの世界を示す言葉だが、最近になって頻回に口にされるようになった。
なぜなら、異界から“人間”と呼ばれる生物が時折迷い込むようになったからだ。
その者たちが住まうと言われる“地上”と区別すべく、
この世界をそのように呼ぶようになった。
迷い込んだ者達を捕らえ話を聞くと、
人間達の住む世界とこの世界をつなぐ“死神の桶”と呼ばれるものが存在し、
その中に水を張り身を落とせば、こちらの世界にたどり着くという。
とはいえ、死神の里の者達からすれば、人間は弱く脆き者達。
力を持たず、その命は儚い―――。
せいぜい餌か玩具になるのが定であり、大した脅威にはならない…
今のところは。
「一応長に報告するか？」
「ああ」
短い返事を返すと、木から飛び降りる隼。
「影？」
「―――……いや。やっぱり、今回はその人間の処遇、俺に譲ってくれないか？」
顔をしかめ、隼は首をかしげる男の前を通り過ぎる。
ゆれる深紫の長髪の隙間から獣耳が生え、
着物の裾から尻尾が覗く。
「譲るも何も、お前が掴んだ情報だから 俺達にどうこう言う筋はないけどさ……」
姿を変える隼に、息をのむ男。
「出かけてくる」
「―――……了解」
次の瞬間には姿を消す隼の、いた場所から視線を逸らせた鬼の男は、
ぽりぽりと頭を掻いた。
「ほんとにアイツ、“鬼”なんだよな―――？」
……百姿の影(びゃくしのかげ)
諜報活動を主に行う隼は、様々な種族に姿を変える。
声色だけでなく性格までもまるで別人に虚言し、
その変装は同族でも見破る事が困難である。
老若男女を使い分ける隼を、里の者は”百の姿を持つ影”と呼んだ。
部下を数名持ちながらもほとんどを一人で行動し、
その完璧な変装に部下ですら 何が彼の本当の姿なのかを 疑いたくもなる。
―――彼は本当に同族なのか…本当に、味方なのか―――と。
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kohaku(プロフ) - 名無しさん» コメント有難うございます。お褒め頂けて光栄です！ (2022年5月28日 15時) (
レス) id: 010498cf3b (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 情景描写がとても素敵で感動しました！ (2022年5月28日 13時) (レス) id: 645a3b4e65 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト受けて頂きありがとうございます！！ (2021年5月16日 9時) (レス) id: 16ac793f5a (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 美園さん» リクエスト有難うございます！確認事項がありますので、ボードにお邪魔いたします (2021年5月15日 20時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト？でシノンちゃんがハノンに紙芝居を見せた後、陸翔くんがどうなったか知りたいです！いいですかね？ (2021年5月15日 20時) (レス) id: 0b7aaa97b0 (このIDを非表示/違反報告)
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