第10夜：IRIS（虹の女神）�� ページ30
言われて再度空を仰ぐが、陸翔にはどうも、あの虹が赤と黒には見えなかった。
「国によって、種族によって…また個体によって考え方も色の概念も、表現する言葉も違う。
違うものを表現しているようで、実は皆が同じものを見ていることだってあるし、
思い込みや概念を取っ払って見方を変えれば、
見えなかったものが見えてくるかもしれない…。
それは案外、ワタシ達の近くに存在するかもな―――」
再び酒樽を手に取ると、陸翔は目をしかめ
「オレに学はない。小難しい話は苦手だ…」と一蹴した。
だが、彼女の言葉は陸翔の耳に張り付いて離れない。
繋がりそうで繋がらない、もやもやとした霧のような感情が胸をうごめいた。
―――今何か…大事なことが見つかりかけたような……
深く考えようとすればするほど、“ソレ”が何かが解らない。
「大体、どうして虹の話になったんだっけ？」
ゴクゴクと、樽の中身を一気飲みすると、
陸翔は片手で口元を拭い、眼下に広がる里を見下ろした。
「いや、さっきまで雨を降らせていたって話からだろ？
植物を育て、塵や埃を拭い落すためにも、定期的に“雨”は必要なんだって―――」
「ああ、そうだった…か」
テーブルの下に転がったいくつもの樽を見て、陸翔はため息をつく。
「さっきのレノンの話……なーんか引っかかったのにな―――」
(全然思考が回らない…オレ、何考えていたっけ―――ヤバいな、飲みすぎたかな)
「飲み過ぎだ」
「オマエに言われたくない！」
目の前ではレノンも、陸翔と同じ量の酒樽を空にしていた。
「今日はこの辺にしておこう…迎えを呼ぶか？」
「ん―――ああ……帰るだけなら大丈夫だ。帰りにエオに酔い止めの薬草もらっとくか…」
「それはやめとけ。そのまま会うと嫌われるぞ？」
「―――んじゃぁ、ハヤトかな。あいつならなんか適当に持ってるだろ」
「はは…部下にも嫌われない様に気をつけろよ？」
頬杖をついて下を向いたまま、陸翔は黙り込んだ。
酒の飲み過ぎで寝たようにも見えたが、しばらくするとレノンの背後で、彼女の部下がそっと耳打ちする。
「狼男の里から、陸翔様の弟子と名乗る男が来ておりますが―――」
「―――……ああ、迎えか」
レノンが「通してやって」と手招きすると、獣人の部下に連れられ、
深紫の長髪の少年が姿を現す。
陸翔の瞳の色に似た。深紫の獣耳と尻尾を持つ狼男の少年だった…。
(寝たのかと思っていたら、精神感応で部下を呼んでいたのか)
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kohaku(プロフ) - 名無しさん» コメント有難うございます。お褒め頂けて光栄です！ (2022年5月28日 15時) (
レス) id: 010498cf3b (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 情景描写がとても素敵で感動しました！ (2022年5月28日 13時) (レス) id: 645a3b4e65 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト受けて頂きありがとうございます！！ (2021年5月16日 9時) (レス) id: 16ac793f5a (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 美園さん» リクエスト有難うございます！確認事項がありますので、ボードにお邪魔いたします (2021年5月15日 20時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト？でシノンちゃんがハノンに紙芝居を見せた後、陸翔くんがどうなったか知りたいです！いいですかね？ (2021年5月15日 20時) (レス) id: 0b7aaa97b0 (このIDを非表示/違反報告)
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