第10夜：IRIS（虹の女神）�� ページ29
「虹？」
「そう、雨の後に出てくるアレだ」
にんまりと微笑んだ口元から犬歯をのぞかせながら、その女性は空を指さした。
片手に、樽のような酒瓶を持ち、会話の合間に酒を煽る。
陸翔は酒瓶をテーブルに置くと、示された方向に視線を向けた。
空には7色の橋が架かっている。
「ほぉ―――」
雨や霧、水しぶきなど空中の微小な水滴によって 太陽光線が分光されて見られる大気光学現象だと、女はご丁寧に説明を追加した。
先刻から、この獣人の里にある小高い丘上のバルコニーで酒を煽るのは、
狼男の長である陸翔と、その親友で 獣人の長であるレノン・ファクラシー。
オレンジ色の髪の合間から、トラを彷彿とさせる獣耳がひくりと動いた。
まだ昼間だというのに、二人の座るテーブルと足元には、幾つもの酒樽が転がっているが、
この二人に酔った様子は微塵も見えない。
「お前は、あの光の橋が何色に見える？」
レノンの問いかけに、陸翔はふと鼻を鳴らした。
「言っておくが、普通の狼は他の種族と違って色覚がはっきりしていないんだぞ？
オレ達は視力より、この嗅覚で物の区別をつける」
そう言うと、濃紫の瞳を指差して見せた。
彼の回答など解り切っていたかのように、今度はレノンが鼻を鳴らし、
左目を閉じたままオレンジ色の右瞳を細めた。
「知っているさ。だがそれは、普通の狼の話だ。
狼男の長である陸翔には、きちんと色覚はあるだろう？」
この前は金髪美人の幼馴染の話をしていたじゃないか、と、揶揄った。
「―――……。そうだな、５色くらい？赤と黄色、緑に青、紫…か―――」
レノンに指摘されたように、普通の狼は色覚がないらしいが陸翔には色覚がある。
彼女の言う虹の色は、５色だと指摘した。
レノンは小さく頷くと、ヒトそれぞれに見え方と感じ方が違うと話した。
別の者に同じ質問を問いかけると、あるものは７色と答え、
ある者は８色と答える一方で、４色や３色…２色と答えたものもいたのだ……と。
「２色だぁ？！」
「そう、そいつにはアレが“赤と黒”に見えるそうだ―――」
「ふぅん」
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kohaku(プロフ) - 名無しさん» コメント有難うございます。お褒め頂けて光栄です！ (2022年5月28日 15時) (
レス) id: 010498cf3b (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 情景描写がとても素敵で感動しました！ (2022年5月28日 13時) (レス) id: 645a3b4e65 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト受けて頂きありがとうございます！！ (2021年5月16日 9時) (レス) id: 16ac793f5a (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 美園さん» リクエスト有難うございます！確認事項がありますので、ボードにお邪魔いたします (2021年5月15日 20時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト？でシノンちゃんがハノンに紙芝居を見せた後、陸翔くんがどうなったか知りたいです！いいですかね？ (2021年5月15日 20時) (レス) id: 0b7aaa97b0 (このIDを非表示/違反報告)
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