第７夜：理由 �� ページ22
キスされた頬を抑え、顔を赤らめるアリアは可愛い。
「不意打ちなんて、ズルいよ―――隼」
「そう？」
(ズルいのは―――そんな可愛い顔を見せるアリアの方だ)
「いつも僕ばっか大好きって言ってさぁ―――隼は余裕いっぱいで澄ましててさ…
僕よりずっと、子供のくせに…」
(そんなことない、俺だってアリアにずっと、ドキドキさせられてる)
―――悔しいから、口に出さないだけ。
そんな事を考えてしまうのは、アリアが指摘するように、俺が子供だからだろうか。
やっと抱き着いていた腕を離したアリアは、ティカップを口にする。
「このカップ、僕のお気に入りなんだ。」
「ふぅん」
隼は、テーブルからティカップを手に取り、その絵柄を眺める。
確かに、青紫で流れるような紋様が描かれており、涼しげでいて美しい。
とはいえ、隼は調度品にさして興味がない為、言われなければ気に留めなかった。
カップ等飲めたらそれでいい、求めるのは機能性だ。
興味なさそうに、カップに口をつける隼を、横目で見守るアリア。
「模様の青紫は隼の瞳の色と同じ…なんだか隼に口づけているみたいじゃない？」
ゲホゲホゲホ！！！
激しく咽込む隼の隣で、「大丈夫？」と涼し気に訪ねるアリア。
にんまりと笑った口元を見て、彼女に揶揄われた事は容易に想像がつく。
「言い方ッ―――…アリア―――」
「あはは！可愛いなぁ、隼…。
その紅茶は低温で淹れられる茶葉を使っているから、そんなに熱くないよ」
心を落ち着かせ、ようやく二口目の紅茶を口に含む。
確かに、舌を焼く程の熱さはなく、十分に芳醇でフルーツのような香りとさっぱりとした甘みを感じられた。
「美味しい？」
紅い瞳が覗き込む。
「―――うん」
「よかった！」
柔らかく笑うアリアの赤い瞳を、今度は隼が覗き込んだ。
彼女は―――見た目は女性なのだが、まるで男性のように振る舞う。
隼が精霊の里を訪れることは珍しいことではない。
今日のように鬼(本来)の姿で訪問する事は珍しいが、諜報活動(仕事)の一環で女精霊のミストとしてこの里を訪れることは幾度とあり、
この里の副長であるアリアを里中で見かけたり、里の民から彼女についての話を聞くことは しばしばあった。
里長のリリアと同じく民を思う心優しい精霊だと、誰もが彼女を称賛していたが、
性別の話になれば一変して表情を変える。
そこは、触れてほしくない所なのだと容易に想像が出来た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kohaku(プロフ) - 名無しさん» コメント有難うございます。お褒め頂けて光栄です！ (2022年5月28日 15時) (
レス) id: 010498cf3b (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 情景描写がとても素敵で感動しました！ (2022年5月28日 13時) (レス) id: 645a3b4e65 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト受けて頂きありがとうございます！！ (2021年5月16日 9時) (レス) id: 16ac793f5a (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 美園さん» リクエスト有難うございます！確認事項がありますので、ボードにお邪魔いたします (2021年5月15日 20時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト？でシノンちゃんがハノンに紙芝居を見せた後、陸翔くんがどうなったか知りたいです！いいですかね？ (2021年5月15日 20時) (レス) id: 0b7aaa97b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
