第５夜：夢幻花 �� ページ14
隼は木の枝を飛び越え、熊の方向へと向かった。
獰猛な視線の先には、ハーブ採取に夢中になるエルフの少女がいたのだ。
(間に合うか…？！)
じわりじわりと、少女の背後に熊が迫りくる。少女はハーブに夢中で気づいていないようだ。
「Check six!!!(後ろ!!!)」
叫び声に気づき、少女はやっと後ろを向く。鋭い爪が振り上げられていた。
「ッッきゃぁぁぁ！！！」
「チッ……」
懐刀にしていた短刀を引き抜くと、熊と少女の間に向かって刀を投げた。
背後から飛んできた刀に驚いた熊は一瞬身をひるませ、
その隙に抜刀した隼が少女との間に滑り込む。
グルルル・・・・・
少女を背に隠し、牙をむき出しにしていた熊の目をじっと睨む隼。暫くうなり声を上げていたが、諦めた様子で森の奥へと戻っていった。
はぁ……
―――とりあえずは、諦めてくれたか。
熊は元々臆病な動物だが、気が高ぶっていたということは近くに子供がいたかもしくは―――。
一難を退け、隼は大きくため息を落とした。
隼の背後で尻もちをついて震える少女にちらりと視線を落とし、
転がった籠と周囲に散乱してしまったハーブや花を拾い集めると、
震えが止まない少女に差し出した。
「大丈夫？」
「―――ありがとう…」
手を引いて立たせ、その姿を視て確信を得る。
「一人で出歩くと、また母上様に心配をかけるよ？シノン…」
名を呼ばれたことに一瞬戸惑った様子を見せた少女は、隼の姿をみて大きな瞳を二度、見開く。
「貴女は――」
「また会ったね……今度は、薬草探し？」
顔を上げた少女は、いつかの夜に黒塊に手負いを受けた隼を助けようとしたエルフ。
彼女が手にしていた籠には、薬草になるハーブや花が集められていた。
(そういえば、あの辺りにも薬草になるハーブが多くあったな……)
「貴女、傷はもういいの？」
シノンは隼の側腹部を覗くように視線を向ける。
「大丈夫よ。ハノン様に治していただいたから…」
「そう、よかった！」
両手を合わせてほほ笑む少女に、軽い頭痛を覚える。
(俺の事より、自分の心配をしてほしいけど……)
「里を外れた森には危険もあるの。自分で対処できなかったり、対策を講じていないなら一人で立ち入るべきじゃないわ」
(野生の動物だけでなく、エルフを狙う他種族や“黒塊”達もいる―――)
「貴女も、よ？」
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kohaku(プロフ) - 名無しさん» コメント有難うございます。お褒め頂けて光栄です！ (2022年5月28日 15時) (
レス) id: 010498cf3b (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 情景描写がとても素敵で感動しました！ (2022年5月28日 13時) (レス) id: 645a3b4e65 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト受けて頂きありがとうございます！！ (2021年5月16日 9時) (レス) id: 16ac793f5a (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 美園さん» リクエスト有難うございます！確認事項がありますので、ボードにお邪魔いたします (2021年5月15日 20時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - リクエスト？でシノンちゃんがハノンに紙芝居を見せた後、陸翔くんがどうなったか知りたいです！いいですかね？ (2021年5月15日 20時) (レス) id: 0b7aaa97b0 (このIDを非表示/違反報告)
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