Page.2 少年 ページ5
白銀色の三つ編みが、ふわりと揺れる。
甘い香りが漂う寮のキッチンで、銀色のスプーンが我の鼻先に差し出された。
ペロリ。
舌先を器用に使い、一口でスプーンを舐めあげると、口腔内にオレンジの香りとつるんとしたジュレの触感が広がった。後からじんわりと広がるのは、甘くふわふわとした…クリームだろうか。
ともあれこれは、我の乏しい語彙力では表現しきれない程に―――美味だ。
「どう?ケロちゃん」
小首を傾げながら膝を抱え、子犬姿の我に合わせて視線を落とすのは、主と同じ悠久学園の5年に在籍する宵風 篝(よいて かがり)だ。
幼い見た目をしているが、彼女は炉と火の女神ヘスティアの生まれ変わりである。
ヘスティアと言えば冥王の前世を持つ主の姉神にあたるオリュンポス十二神が一人―――。
そんな彼女が、なぜ我の口に甘物を差し出すのか……
にこにこと蒼い瞳を綻ばせながら、我の返答をじっと待つ。
『大変美味でございます―――篝様』
「よかったぁ」
彼女は蒼い瞳を一層細めた。だが、篝が聞きたいのはそんなありふれた感想ではないだろう。
『我主も好みかと』
「ふふっ」
我のその言葉を聴き、篝はゆっくりと立ち上がると、テーブルの上に並べられた、鮮やかなオレンジのカップを楽しそうに小さな箱に詰めていく。
「こっちはクラスの子達に、これはレアママで…こっちが―――悠都ちゃん」
―――悠都ちゃん。
そう……今世の彼女は、我が主の想い人でもある。
前世、主がヘスティア神と交流を持つことは滅多になかったというのに―――
主に対し私見を述べると、
“僕が惹かれるのはヘスティアじゃないよ…篝さん。彼女の声は心地よくて、傍に居るととても落ち着くんだ”
何の恥ずかしげもなく、さらりと述べる。
行き過ぎた表現は、寧ろ女性に引かれてしまうというのに―――この恋愛下手なところは、前世からちっとも変ってはいないようだ。
だからこそ、我がこうして主の恋を応援しようと―――
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kohaku(プロフ) - 彩華さん» 有難うございます!引き続きの応援頂けるよう、頑張ります! (2021年12月27日 7時) (レス) @page30 id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 遅ればせながら、悠都さんお誕生日おめでとうございます!これからのご活躍をお祈りいたします!もちろんケルべロスさんも! (2021年12月26日 14時) (レス) @page30 id: ea837d69e9 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - シオンさん» 有難うございます! (2021年12月21日 19時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 誕生日おめでとうございます〜〜🎉 (2021年12月21日 19時) (レス) @page30 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 鈴桜さん» 有難うございます!そう言って頂けて嬉しいです! (2021年11月24日 17時) (レス) @page28 id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
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