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コホン……
咳払いを入れた海条が、気を取り直して主に向かい合う。
その声は落ち着きを取り戻し、教師として、生徒を諭すかのような口調であった。
「悠都君―――その、恋色沙汰は私などではなく、同世代の友人に聞く方が良いでしょう…」
「冥界に住まう俺に、“友人”が少ない事はポセイドンもよく知っているだろう?」
「何度も言いますが、私はポセイドンではありません。“海条先生”です!それに、今世の貴方には沢山友人がいるではないですか―――(何も私に聞かなくても……)」
遠回しに断っているのだろうが、こんな回りくどい表現は、今の主には通用しない。
案の定、小首を傾げていぶかし気な視線を向けている。
これでは埒が明かない。早々に第三者の介入が必要か―――
我は近くの誰かに助けを求めようと、主の影から飛び出した。
ふわり―――と我の体が宙に浮く。
我名はケルベロス―――冥界の王の従獣にして冥府の番犬である!我が体を気軽に抱き上げるなど言語道断、有るまじき行為だ。
何奴かと振り向いたそこで我を覗き込むラズベリーレッドの瞳に、牙を剥き出した口をぱくりと閉じ、出しかけた鋭い爪をぐっと握って咄嗟に肉球に埋めた。
―――危なかった……
このお方に牙をむくわけには行かない―――
咄嗟に体を丸めて縮こまる我を抱いたまま、ラスベリーレッドの瞳は主の袖を掴んでちょこりと引いた。
「海条先生、××先生が探されていました。教務室に戻っていただきたいと―――」
「あ、ああ!ありがとう、では私はこれで……」
渡りに船…とでも言いたげな安堵の表情を浮かべた海条は、そくさくと踵を翻した。
「あ、ポセイドン……」
呼び止めようと主が手を伸ばした時には、既に海条の姿は見えず。
よほど、主からの相談が困っていたのだろう。
「―――……行ってしまった」
「悠都先輩―――」
捕まれた袖口に視線を落とす主は、我を抱いたままの彼女に視線を戻した。
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kohaku(プロフ) - 彩華さん» 有難うございます!引き続きの応援頂けるよう、頑張ります! (2021年12月27日 7時) (レス) @page30 id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 遅ればせながら、悠都さんお誕生日おめでとうございます!これからのご活躍をお祈りいたします!もちろんケルべロスさんも! (2021年12月26日 14時) (レス) @page30 id: ea837d69e9 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - シオンさん» 有難うございます! (2021年12月21日 19時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 誕生日おめでとうございます〜〜🎉 (2021年12月21日 19時) (レス) @page30 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 鈴桜さん» 有難うございます!そう言って頂けて嬉しいです! (2021年11月24日 17時) (レス) @page28 id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
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