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「そう言えば―――昨夜、勝手に黒の軍勢と戦闘しただろう」
「――んん〜?そうだっけ」
小首を傾げる帆希。その朗らかな表情には悪意はなく、彼にとって戦闘は記憶にのこる程の“大した事柄”ではないのだろう。
主は教科書を広げながら、後ろの席の帆希に話しかける。
一度に冥界に流れる魂があまりに多いと、奴等(冥府の裁判官)の負担が大きくなる。特に、主達が対峙する“黒の軍勢”の魂に対する裁判は、その性質上複雑で難航することが多いため、冥府に一時的な混乱が生じやすいのだ。
(まぁ―――冥界の住人が増える事は、王である主にとっても有難い事なのだが…)
人間として転生したため、王と言えど冥界に入る事の出来ない主に代わり、双方の国を往復できる我が主に逐一報告をしているのだが、昨夜一時的に生じた冥界の混乱の報告の件について、帆希を糾弾するつもりなのだろうか。
我は固唾を呑んで、主の次の言葉を待った。
「―――呼んでくれたら、僕も行くのに」
「あはっ!なぁに?悠都も闘いたかったのぉ〜?」
―――まぁ、あいつ等(獲物)みんな、ぼくのモノだけどね。
悠都には譲ってあげないよぉ〜。
机に伏せ、にまにまと笑いながら伸ばした腕で主の背中を小突く帆希に、面倒そうに顔をしかめる主が答える。
「肉体を離れた魂が、皆大人しく冥界に行くわけじゃない―――この世に浮遊し続けると“厄介”な事は、帆希も知ってるだろ?」
―――だから、肉体ごと近くを漂う魂を冥界に送り届ける…後は向こう(冥界)の部下達が、その血肉を喰らい、分解してくれる。魂は冥界の渡し船がきちんと“審判の間”まで送り届けてくれるのだ。
「んふっ、壊した後の事なんて、ぼくは知らないけどね〜」
―――そいつ等が作り出す“厄”こそが、ぼくの原動力の一つだしぃ?
素知らぬ顔を決め込む帆希。
その“厄介事”を想像したのか、主は自らの鳩尾に手を添えた。
胃が、傷むのだろうか―――。
我の頭も、先日から頭重感が消えないのだが。
「まぁ、気が向いたら呼んであげる〜」
帆希は青く澄んだ空に薄浅葱色の瞳を向ける。
主もまた、彼の視線の先―――青い空を見上げていた。
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kohaku(プロフ) - 彩華さん» 有難うございます!引き続きの応援頂けるよう、頑張ります! (2021年12月27日 7時) (レス) @page30 id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 遅ればせながら、悠都さんお誕生日おめでとうございます!これからのご活躍をお祈りいたします!もちろんケルべロスさんも! (2021年12月26日 14時) (レス) @page30 id: ea837d69e9 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - シオンさん» 有難うございます! (2021年12月21日 19時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 誕生日おめでとうございます〜〜🎉 (2021年12月21日 19時) (レス) @page30 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 鈴桜さん» 有難うございます!そう言って頂けて嬉しいです! (2021年11月24日 17時) (レス) @page28 id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
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