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Page.0 星月夜 ページ1

あれは―――いつの日だったろうか。

暴君クロノスを時の扉に封印した折、オリュンポスに住まう、それはそれは眩しい神々が、世界の支配についてを話し合っていた―――

ある神は白く澄み渡る大空を、
ある神はどこまでも広がる蒼い海を、
そしてある神は人間の住まう大地を支配し、慈善・博愛を持って豊かな“世界”を育んだ。

さて―――クロノスを封印した“時の扉”の守りを……未だ混沌と広がる地下のそのまた奥、
冥界の国を、一体だれが支配するのか―――

神達は顔を見合わせ、そして口を堅く噤む。
死者の魂の行きつく場所…大地が枯れ、空もない、光の届かぬその場所は
光り輝く神の住まう場所ではない。

『ならば―――私が冥界へ行こう』



こうして我主はただ一人で冥界へと降り立ち―――王となった。





冥界の王は、死者の魂に最後の審判を下す。
その前世の行いを精査し、魂を天国と地獄に振り分ける……

そこにたどり着く魂は、決して綺麗なものばかりではない。
嘘や憎悪にまみれた哀れな魂の話に辟易しながらも、じっと耳を傾け、真実を見抜く。
そして、あるべき道へと誘うのだ―――





ある日、
暗く冷たい地下に広がる“世界”を見渡す主が、月も星も存在しない……ただ黒い空間(そら)を見上げて、ぼそりと呟いた。

「もし――もしも……
 私の魂に、別の存在(居場所)が許されるのなら―――
 色に溢れた世界で、自由を手にしてみたい」

『―――主……?』

「望んでも、仕方がない事。ここへは私の意思で来たというのに」

ふと、自嘲を零すと、
主は、何事もなかったかのように踵を返し、寝所で本を広げた。



主が地下の世界へ降り立って悠久の時が過ぎ去った。
我は主の従獣として、ずっと彼の傍にお仕えしてきたのだが……彼のこんな言葉を聴くのは初めてだ。

これからも、この世界は変わらず続くのであろう。
今までのように
悠久の時を―――過ごすのだろう。

誰もがそう思っていた……

それは、“世界の理”であり 神々ですら覆す事が出来ない
許されぬことだと 信じて疑わなかった。

└→



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kohaku(プロフ) - 彩華さん» 有難うございます!引き続きの応援頂けるよう、頑張ります! (2021年12月27日 7時) (レス) @page30 id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 遅ればせながら、悠都さんお誕生日おめでとうございます!これからのご活躍をお祈りいたします!もちろんケルべロスさんも! (2021年12月26日 14時) (レス) @page30 id: ea837d69e9 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - シオンさん» 有難うございます! (2021年12月21日 19時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 誕生日おめでとうございます〜〜🎉 (2021年12月21日 19時) (レス) @page30 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 鈴桜さん» 有難うございます!そう言って頂けて嬉しいです! (2021年11月24日 17時) (レス) @page28 id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:kohaku | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年9月20日 16時

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