Place 10 蠢く影の唄 �� ページ6
そう言えば、先程から廊下の電灯や部屋のシャンデリアは見かけるが、それを点灯させるためのスイッチが見当たらない。
音声システムでの起動も考え、何度かそれらしきワードを発してみたが点灯する様子はなかった。屋敷のどこかで配電盤があって、一括管理されているのだろうか…。いや、これだけのゲストハウスがあって、寝室が個別に電気を操作できないのではかなり不便だ。
ならばBT(無線通信)でも使われていたのだろうか―――。
あれこれと考えながら、部屋の調度品に目を配る理玖。
部屋の奥へと足を踏み入れたランは、明かりを確保しようと近くのカーテンに手を掛けた。
理玖の背後で、どさりと何かが落ちる音がする。
「ラン？」
不思議に思い振り向くと、ランが腰を床に付けて座り込んでいる。
「どうした？」
近寄ったランの顔は血の気が引いて真っ青だ。
「っ…あ――――…理玖…あれ―――」
「あれ？」
彼女の隣に膝をつき、その肩を支える理玖。
がたがたと震える指でランが示した方向を見上げると、そこには頭に面を掛けた人が、壁に十字に貼りつけられていた。
「っッきゃぁぁぁぁぁぁ！！！！」
静かな屋敷に、ランの悲鳴が響く。その高い声に、理玖は思わず頭を抑えた。
「なっ？！！」
その異形な姿で壁に貼り付けられた人型を見て、理玖もまた目を見開く。
顔には道化師のような面がつけられており、手足を十字に縛られている。
呼吸はしておらず、生きている気配も感じない。
それはまさしく、人形のようだった。
「あっ…ああ―――」
幼い頃から祓い屋の訓練を受けてきたはずのランですら、これほどまでに取り乱す様子。
咄嗟に腰に据えた刀に手をあてる。
(周囲に“生きた音”は感じない…どうするべきか―――)
ふと壁際を見渡すと、ランが開けたカーテン以外にも、壁一面にカーテンが掛け巡らされている。眉間にしわを寄せる理玖…こうなればもう、嫌な気しかしない。
「………。ラン、そのまま目を瞑っていて」
「えっ……？」
顔を上げようとするランの頭を片手で抑え込み立ち上がると、理玖は壁一面に掛けられたカーテンを片っ端から開けていく。
そこには、仮面を被った無数の人型が、壁一面に十字に掛けられていたのだ。
「―――ッ！」
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