Place 15 覚悟 �� ページ45
昼の眩しい日差しがアスファルトの屋上を照らす。
暗い階段を上ってきた理玖は、思わず目をしかめた。
「放課後に屋上に呼び出しって。俺、苛められんの？」
「何でそうなるんだよ！つーか、そう言うのって体育館倉庫裏だろ？！」
「あ。そっち？」「どっちでもいいよ！」
つまらない冗談を仕掛ける理玖に、思わずランもムキになる。
だがそのおかげで、緊張で震える心が幾分か治まっていた。
「理玖―――お前に、許嫁を申し込んだ」
「は？」
言葉の意味が理解できず、呆けた声を出す理玖。
ランは気まずそうに視線を逸らせると、理玖に事の事情を説明した。
ランは鷹取家という祓い屋一族に生まれた長女で、理玖同様に幼い頃から祓い屋になる為の英才教育を受けてきた。彼女には2つ年上の兄がおり、彼が鷹取家の次期当主と思われていたのだが、その兄には祓いの力がなかった。鷹取家に生まれながら人外を、視る能力も持たなかったという。
これは決して珍しい事ではない…寧ろ、鈴花や理玖のように、姉弟・姉妹そろって強力な祓いの能力を持つ方が珍しかった。
「父が、鷹取家存続のために僕達兄妹に許嫁を充てると言ってきた……」
「まぁ、兄上に祓いの力がないなら、君に白羽の矢が立つのは順当な流れだ。だけど、何でそれが俺なんだよ。俺は鈴花の許嫁だぞ？」
「鈴には、兄が見合いを申し込んでいる」
「はぁぁ？！」
声を荒立てる理玖をランが抑える。
「落ち着いてくれ、理玖―――君が怒るのももっともだ…だけど、冷静になって考えてくれ―――」
「冷静？！(になんて、なれるかよ)」
「兄は鷹取家の人間だが、力を持たない普通の人だ。つまり、祓い屋ではない―――。兄と結婚すれば、鈴は人外に命を狙われる事なく、そんな夫を不安に見舞われながら待つこともない…“普通の生活”が出来るんだ。」
ドクン…
と、脈がムラ打つ。
先程まで怒りで頭に上っていた熱が、ランの言葉で一気に冷めた気がした。
「怖がりな鈴に、普通の幸せを、あげられるんだよ―――」
「―――………」
言葉を失う理玖。
心のどこかでずっと抱えていた、一番の不安が、現実のものとなった。
「―――……君は、それで良い訳？取ってつけられたように俺と許嫁にされて、黙っているのか？」
彼女が断ってくれれば、それを理由に何とでも言い包められる。
そう思っていた理玖の期待も、音を立てて崩れ落ちた。
「僕は、ずっと昔から、理玖の事が好きだったから」
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