Place 10 蠢く影の唄 �� ページ5
落ち着いて、そう分析するのはカイルとランだ。
彼等の提案を聞いて、和希は即座に決断を下すと鈴花、衣麻奈、ランに視線を送った。
先程から鈴花の腕を離さない衣麻奈は彼女とのペアが良さそうだが、そうなると動きに偏りが生じる。
「4―２で分かれよう」
そう、提案したのはランだった。
「僕と理玖が右側を…後の4人は左側から回ってくれ。人数の多い方が、衣麻奈は安心だろう？」
ランの言葉に、衣麻奈は鈴花の腕を持ったまま小さく頷く。
「―――……」
ちらりと、理玖に視線を送る和希。
あれだけ鈴花と共に行動する事を譲らなかった理玖が、この提案を受けるか不安だった。
彼なら、鈴花と衣麻奈を連れて行くとも言いかねないし、４−２に分れるならば和希とカイル…もしくはランとカイルがペアでも問題ないはずだ。
「分かった、それで行こう――」
「良いのか理玖？」
彼の意外な返答に、和希が問い返す。
「怖がりな二人がいる方に、人数と視界が確保できるライトがある方が安心だ」
「幸い僕は小さい頃から祓い屋の訓練を受けているから、普通よりは夜目が効く―――おそらく理玖もだろう？」
「……ああ」
それならばと、ランの提案通りに二手に分かれた6人は、2階の探索を開始した。
鈴花達と別れた理玖は、ランを連れて廊下沿いのドアを片っ端から開けて回る。
幾つかのゲストルームを手早く確認した後、少し変わったドアを見つける。先程までのゲストルームと比べると扉に施された細工が凝っており明らかに他と差別されているようだ。
「この部屋だけ、何か特別だな？」
「そうだね…開けるよ？」
「うん」
ランの同意を得ると、理玖は躊躇なくドアを開いた。暗い室内は先程までより奥行きがありそうだ。この屋敷の持ち主の部屋だろうか―――。
「そう言えば、水道が出ると言う事はどこかで水を供給する為のモーターが回っていると言う事だよね？配電盤さへ見つければ屋敷に電気がつくんじゃないのか？」
目を凝らしながら部屋を見渡すランが問いかける。
「確かにこの規模の島だと、どこかに浄水場があっても不思議はないし、今でも水道から水が出ていると言う事は、少なくともその浄水場を動かすための発電機能は生きているということだ。だけど、戸建ては直結直圧方式が取られている事が多いから、水道が出るからと言ってこの屋敷自体に電力が供給されているかどうかは別問題だ。」
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