Place 13 青のシンフォニー �� ページ36
その間、理玖と青羽は外箱の彫刻や絵柄の作成に取り掛かる。握りなれない彫刻刀や絵筆を動かし、頭を悩ませ、形としていく。
作業は数日を要した。時間が合えば二人で工房を訪れ、あれだこれだと賑やかに話を弾ませ、手を動かしなさいとドワーフの師匠に怒られる事も。
理玖が学校や祓いの仕事の時は青羽が一人で工房に立ち寄り、黙々と作業し、逆に青羽が用事で外せない時は理玖が一人で工房を訪れ、作業をする事もあった。
細かい作業を要するオルゴールディスクの加工が終わる頃、理玖達の外箱装飾の作業もようやく形が見えてきた。外箱に、職人たちによって組み立てられた自動演奏機械部分が取り付けられる。ゼンマイを巻き離すと、美しいメロディが工房に響いた。
「「おおお！！！」」
二人の感動の声が重なる。理玖と青羽は顔を見合わせ、ハイタッチを交わした。
「これは、俺から青羽へ」
青羽の瞳と同じ青緑と左耳に揺れる赤いピアスと同じ色で装飾された、木箱を渡す理玖。
「俺に―――？」
「そ。青羽をイメージして作ってみた！」
「―――……」
「聴いてみて？」
受け取ったオルゴールのゼンマイを回す青羽。
曲調と旋律は聞き覚えがある気がする。
ポジティブで明るい曲調でありながらも、余韻を残す空白と、何かを支え掛けあうようなメロディは、ゆるぎなく力強い一本の芯があり、聴いていてどこかほっこりとさせてくれた。
「優しい“音”だ、ありがとな！理玖」
ニコニコと笑ったままの理玖に変わり、隣で聴いていたドワーフが隣にもうひとつのオルゴールを置いた。それは、青羽が大切に人に贈る為に作ったオルゴール。
「二つのオルゴールを、同時に聴いてみろ―――」
言葉足らずな理玖に代わり、ドワーフが説明を加える。
言われるがままに二つのオルゴールを並べ、同時にゼンマイを廻す青羽。二つのオルゴールの“音”は重なり、互いを引き立てる様に音を盛り上げる。余韻を残していた間は、もう一つの音と掛け合う様に流れ重なる。
「異なる要素が交じり合って効果をもたらす…シンフォニーだな。儂も作っている途中で、音がぴたりと重なる事に気付いた―――。なかなか面白い事をしてくれるじゃないか、小僧」
ニンマリと、口を綻ばせるドワーフに理玖は満足げに笑みを返した。
「いや、職人さん達が俺の“音”を寸分の狂いなく鍵盤に乗せてくれたおかげだよ」
「―――…なんだよ、考える事は…同じだな？」
Place 13 青のシンフォニー �Б�←Place 13 青のシンフォニー ��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
