Place 13 青のシンフォニー �� ページ35
背を押されて連れられたのは工房の奥。
幾人ものドワーフの職人達が小さな金槌を持ち、ディスク型の金属板に小さな突起を打ち込んでいく。
隣で驚く理玖を連れ、青羽はドワーフの待つ工房の奥へと案内された。
パイプオルガンのような天井まで突き抜ける何本もの大きな筒に繋がれた鍵盤の前まで来ると、その前に理玖を座らせた。
「ちょっと待て、今度はオルガン？！」
流石の理玖も、状況を説明しろと青羽の白いセーターの裾を掴み返す。
「そ！ここでは腕の立つドワーフ職人達がオルゴールを作っているんだ！ここのオルゴールは音が良いと評判なんだぜ？」
「それは…凄いけど―――いったいこれは」
「手作りオルゴールを作ろうと思ってな！ほら、もう直ぐクリスマスじゃん？！」
言葉足らずな青羽の説明を補足するように、先程のドワーフが理玖に追加説明を行ってくれた。
青羽は買い物先で出張販売を行っていたここの工房長と知り合い、理玖のピアノの腕を話すと、弾いた曲でオリジナルのオルゴールを作ってくれる事となったようだ。
完成形は“ミュージックボックス”と呼ばれる箱状のオルゴールで、中の自動演奏機械部分はディスクオルゴールタイプで作成されるという。このオルガンの音通りにディスクに凹凸を刻めるらしく、何でも好きに演奏しろというのだ。
外箱は好きに彫刻を施してオリジナルのミュージックボックスを作ることができ、それをクリスマスに大切な人やお世話になった人に渡そうと提案してきた。
正直、鈴花達へのクリスマスプレゼントに悩んでいた理玖にとっては、とてつもなく魅力的な提案だ。早速に、イメージ音楽の作成に取り掛かった。
鈴花のイメージ…茉莉のイメージ…アリサのイメージ…
次々と浮かぶ、人外シェアハウスの大切な人達への、想いと感謝を“音”にしていく理玖。
「理玖、俺の思いも音にしてもらっていい？」
「青羽のイメージ？」
「いや、俺じゃなくて―――。そうだなぁ…怒ったら手が付けられなくなったり、かと思えばテンパって逃げちゃったり…色々助けてくれる優しい子のイメージ？」
「ああ成る程―――任せて！」
音を奏でる理玖の隣に座り、シェアハウスの皆のイメージを声に出す青羽。
仲良く笑う二人の背中を、ドワーフは微笑ましく見守った。
出来た曲は理玖が演奏し、特殊な機械に落とし込んでいく。
それを、寸分の狂いなく円盤に刻み込んでいく職人達。
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