Place 13 青のシンフォニー �� ページ32
無人島で”影を喰われた”被害者達は皆、影を喰われていた期間の記憶を失っている。
白檀は野外活動の下見に行けと言われて向かった無人島で、そこにいるはずのない人物…かつての祓い屋養成学校で共に学んだ白檀の同級生に会ったという。
そこから先の記憶がないと話しているが、おそらく影を喰われたその同級生に油断した白檀もまた影を喰われ、影を操られていたのだろう。
影を喰われ、操られていた期間が比較的短かった白檀は衰弱程度で事なきを得たが、白檀が見たという彼女の同級生は十年近く影を失っていた。本体の身体に及ぼす影響が大きく、搬送された病院で息を引き取ったようだ。
また、操られていた期間の白檀は、教え子であり理玖の同級生でもあるカイルとの戦闘を行い、彼に怪我を負わせている。守るべきはずの生徒を自らの手で傷つけたとあっては、彼女の心に傷を落としかねないと、カイルがこの件を関しては口を紡ぐよう理玖と鈴花に持ちかけた。
白檀にとってはむしろ、この記憶の消失は”心”を守るために必要だったとも言える。
顔をしかめた白檀に、青羽は苦笑いでごまかす。
理玖からは自分の事をあまり白檀に話さないようにと言われていたからだ。
「理玖も色々忙しそうだし！じゃ、また来ますね！！」
色んな事を根掘り葉掘りと聞かれ、余計な事を口走らないようにと、青羽は足早に病室を後にした。
病院を出て、近くの公園にたどり着く。噴水の辺りにヒトだかりができているのを確認すると、青羽もまた、その人だかりに向かった。
伸びやかで楽し気なヴァイオリンの音が響く。
集まった人外や人間の間を抜け、じっと演奏に耳を傾けた。
一曲が終わり弓を降ろした理玖が、ニコリと青羽に微笑みかける。
集まったヒトビトに丁寧に礼をすると、ヴァイオリンを片付けながら青羽の元に近づいてきた。
「面会有難う、青羽。白姉元気だった？」
「ああ、予想通りみたらし団子に一番食いついていた！」
「花より団子なら十分だ。青羽は大丈夫だった？」
「へっ？」
キョトンと首をかしげる青羽。肩まで伸びた左横髪と赤いピアスがさらりと揺れた。
「だって青羽、感情が顔に出やすいからさ―――白姉に色々聞かれていないか心配！」
「ああ―――」
理玖が指摘する通り、青羽は感情が表に出やすい。それは、第三者から見ても直ぐにわかってしまうようで、青羽自身も自覚していた。
「色々聞かれる前に病院出てきたよ」
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