Place 10 蠢く影の唄 �� ページ13
「―――……おかしいと、思わないか？」
一口大に切られたリンゴを口に入れながら、和希はメンバーを見渡した。
「無人島と言いながら、ここには生活に必要な物が揃い過ぎている。何年も人が住んでいないにしては建物の老朽化がすくないし、水道だって生きている。たまたま偶然庭にリンゴの木があり、食べられる実がなっているなんて言うのも出来過ぎだ」
彼の意見に、理玖とカイルも頷く。
「誰かがこの島に来て、定期的に管理をしていると見るのが妥当だろう―――だとすれば、今回の野外活動の目的は何だ？」
「それを考える時に、一番引っかかるのは昨日理玖とランちゃんが見たという仮面を被った人型だな―――」
ランは昨夜の事を思い出してか、両腕を抱えるようにして身震いを起こす。
気味の悪い出来事に、衣麻奈も鈴花の腕を掴んだ。
(そしてもう一つ―――昨夜、暖炉の炎が作り出した…蠢く影の謎…)
理玖は目をしかめた。そんな彼の表情を横目で確認し、和希がメンバーを仕切って話を進める。
「とりあえず、日があるうちにする事は二つ…食料の確保と2階の人型の確認だ」
「その人型が何かによっては、最悪今夜の寝床を移動させる必要がある．．．先にそちらを見ておくか？」
「そうだな―――」
リンゴと白湯を胃に流し込んだ6人は、危険を伴う恐れを考えともに2階へと上がった。
正面の大広間にある階段を上がり、右側の廊下を進む。手前側のいくつかはゲストルームが続いており、昨夜、和希達が毛布を集めてきた折も特に変わった事はなかったと証言した。
突如現れる細工が施された大きな扉。祓いの武器を握る理玖とカイルが先行し、視線を送り合った後、ゆっくりとその扉を開いた。
廊下から差し込む薄明かりが、暗幕のようなカーテンに覆われた真っ暗な部屋の手前を照らす。
後ろから、和希がライトを照らす。壁一面に天井まで伸びるカーテンが掛けられており、ここまでは昨日の状況と同じだった。
昨夜の事を思い出したランが口元を覆って視線を逸らせる。
その肩を撫でながら理玖達に続いて部屋へとゆっくり入る鈴花。
ドクドクと心臓が鳴る。怖がりの鈴花にとっては今にも逃げ出したい状況だ。
「このカーテンだな……」
「ああ―――」
ごくりと、息を飲む6人。
「―――行くぞ？」
壁一面に掛けられたカーテンの継ぎ目に手をかけると、理玖とカイルが左右に勢いよく引き開けた。
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