太陽の住み処【派生作品】 2 (ページ12)

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Place　10　蠢く影の唄　⑨ ページ12

ちらりと正面に視線を向けると、クラスメイトのランと衣麻奈が身を寄せるようにくっついて寝息を立てている。

鈴花は昨日の事を思い出し、鈴花はぶるっと身震いした。

あれは、寝惚けて見間違えたのではない…確かに影が、生き物のように蠢いていた。

――― ランと、衣麻奈の影が……。

「火が消えてしまったから、ちょっと肌寒いよね―――鈴花、温めてあげよっか……？」
「えっ？」

キョトンとする鈴花の首元に、唇を寄せる理玖。
彼の温かい息が、鈴花の首筋にかかると、ニンマリと意地悪く笑ってみせた。丁度その時―――

「俺らが帰ってきた事分かっててやってるだろ、理玖」

部屋に入っていいのか迷いながら、ばつが悪そうに入口に立ちすくむ和希とカイル。
その両手には薪の束が握られていた。

「～～ッ？！！」

鈴花は慌てて毛布で首もとを隠す。

「お帰り！和希、カイル」

二人は抱えてきた薪を暖炉の傍に降ろした。

「やっぱり予想通り、屋敷の壁沿いに薪が干されていた。結構残っていたから、1週間くらいは余裕で持ちそうだ」
「そうか―――よかった」

鈴花よりも一足先に起きた和希とカイルは、夜が明けたのを確認して薪を探しに行ってくれていたようだ。

「あと、食料だけど―――裏が庭になっていて、幾つか果物の木があった。こちらはあまり数がないから、日が昇ったら森を散策してみるか、周りの海で魚貝を取るかだな。」
「港に行けば網やら竿やらがあるかもしれないな…」

ジャケットに包んで持ってきたリンゴを、テーブルの上に並べるカイル。
ここに来るまでに厨房にも寄ってきたのか、果物ナイフとまな板まで用意していた。

話し声で目を覚ましたのか、寄り添うように寝ていたランと衣麻奈も目を覚ます。
目覚めて直ぐは、この受け入れ難い現実に顔をしかめて涙を浮かべていた二人だが、「大丈夫、何とかなる」「無人島と言いながらも雨露がしのげる家があるだけ恵まれている」と話す和希やカイルの優しい言葉に、落ち着きを取り戻していった。

とりあえず水分と糖分を摂ろうと、再び火をつけた暖炉に薪をくべ、湯を沸かす。
まな板や包丁の煮沸消毒と、衣麻奈が持ってきた携帯浄水器を通した水を温め、身体を冷やさぬようにと白湯を口にした。
リンゴは鈴花と衣麻奈が皮をむいてくれる。洗えば生でも食べられそうだが、整腸剤など無い無人島で腹を下す事があれば脱水など致命傷になりかねない。事は慎重な方が良いと、可能な限りの安全性を考えて動いた。