Place 1 メレッド �� ページ7
不気味に笑うその口はみるみるうちに大きく割け、狼のそれへと変わっていく。
「……お姉さん、人を食べてるの？」
人ならざる姿へと変貌する自らを見て、慌てることなく小首をかしげる理玖に、
妖狼の女はぺろりと長い舌を、鋭い牙をのぞかせた口元に這わせた。
「ええ、何人もの人の子を―――ぺろりとね」
「―――子供？どうして」
女はひくりと、獣の鼻を震わせた。
理玖の言葉が癪に障ったのか、彼女は声色を苛立てる。
「どうして…ですって？子を失った人間どもの親の泣き顔が、見たいからさ！！」
大きく割けた口角から、興奮と共に口腔内に溜まっていた唾液がしたたり落ちた。
女はどすどすと地を蹴り、一気に理玖との間合いを詰める。
深い毛におおわれた獣の腕で、鋭い爪を立てると、
一歩も動かぬ理玖の首元に不気味に光る爪を振り下ろした。
「―――……怖くて一歩も動けないのかい？」
薄暗い路地の壁塀に、まがまがしい形相の妖狼と小さな人の影が、静かに揺れた。
爪先が白い頸部に小さく刺さり、一筋の赤い糸のような血液を流す。
「―――……」
人形のように動こうとせず無言のままの理玖に、妖狼の女は言葉を続けた。
「お前は可愛いねぇ。ああきっと、お前を失った時のお前の母は、狂う様に泣き叫ぶのだろうね―――」
「母上は、きっと泣かないよ―――。」
「何？」
妖狼の腕をゆっくりと離す理玖の、寂し気な表情を見て、女は目を見開いて驚いた。
想像していた彼の瞳には、恐怖や絶望は微塵も見えない。
ただ、寂しげで自嘲するような瞳に、驚いた。
「母上は、俺を“祓い屋”として育てる限りとっくに“覚悟”も決めているはずだ。
だけど、怖がりで優しい女の子が、きっと耳が割ける程泣き叫んじゃうから…
ごめんね、まだ死ねないよ」
風のように小さく後方に跳び、女との間合いを取ると、
何処から取り出したのか長い日本刀を両手で構え、
鍔を鳴らした。
哀しい微笑みと、“気”を放つその刀を見て、２・３歩足を引く妖狼。
「坊や……“祓い屋”か？！」
だから恐怖を見せなかったのか？
薄暗い路地のかすかな光を集めるように蒼く輝く刃に、妖狼は目を細める。
彼の纏う空気からは、殺気こそを感じずともどう足掻いても
自分に殺せるモノではないと感じさせる、何かがあった。
「―――アラートが出ている。
“祓い屋”達が血眼になって君を探しているよ……早く、逃げなよ」
「・・・・・・そうか、“祓い屋”か」
Place １ メレッド �ア�←Place １ メレッド ��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kohaku(プロフ) - 兎夢さん» こちらこそ、素敵なご縁を有難うございます！ (2020年11月1日 22時) (
レス) id: d6f223475b (このIDを非表示/違反報告)
兎夢(プロフ) - 解釈通りです…！ありがとうございます…！ (2020年11月1日 21時) (レス) id: 37b8ca6f5d (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - サナティさん» こちらこそ、素敵なご縁を有難うございます！羽や固有能力の使い方や、言葉遣いに問題はなかったでしょうか？ご指摘やご希望があれば遠慮なく仰ってください！ (2020年10月31日 23時) (レス) id: d6f223475b (このIDを非表示/違反報告)
サナティ(プロフ) - アリサがめっちゃ解釈通りです、ありがとうございます！これからも更新頑張ってください！ (2020年10月31日 22時) (レス) id: 249d9050a8 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - 桜雲さん» こちらこそ、素敵なご縁をありがとうございます！ (2020年10月28日 21時) (レス) id: d6f223475b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
