【Avatar Code（アバターコード）】 (ページ40)

今日:9 hit、昨日:10 hit、合計:5,320 hit

Code No　05　⑩ ページ40

有理とAは深々と礼をし、牧野を見送った。ゆっくりと顔を上げ、ちらりと横目で有理を覗き見るA。バイクのテールランプが見えなくなった後、関を切ったように有理はAの両手を握って激しく振った。

「きゃぁぁぁ！！もう、立夏先生カッコよすぎ！！」

Aが描いていた有理のクールビューティなイメージがガラガラと音を立てて崩れていく。酒を飲んでいるとはいえ、少女のようにはしゃぐ有理はとても可愛らしかった。

「やっぱり…ユーリちゃんの好きな人って…牧野先生なの？！」
「そうよ？！高校の部活中にスパイクでぱっくり足を切っちゃって…救急で運ばれた時に担当してくれたのが立夏先生だったの！先生に憧れて、先生と同じ大学の医学部に入って、同じ病院に就職しようって決めていたのよ！！」

(それ―――もう、ストーカーレベル…)

彼女の熱に圧倒されるA。ぽつぽつと夜道を歩きながら、途端に有理は語り出す。

「立夏先生GID(性同一性障害)らしくって、でも私的には愛に性別なんて関係ない！！から、全然問題ないんだけど―――年齢はねぇ。学生時代から色々アプローチかけていたけど、もう娘くらいにしか見られてなくってさ…もっと早く―――あと25年、いや20年早く生まれていたら、恋愛対象になれていたのかな…」
「―――ユーリちゃん」
「それから比べたら、Aの10年なんて、まだまだ範囲内よね！一緒に年を重ねられるって…羨ましい」

「私は別に！凪君とそう言うんじゃないんだから―――」

慌てて否定してみるが、心の中を見透かしたような有理の微笑に、それ以上を言えなくなった。

今日の有理は、なんだか可愛い―――。

お酒を飲んでも呑まれる事なんて滅多となかったのに。
多弁で、表情がコロコロ変わって、感情がむき出しで。いや、表に出しているのは、彼女の中のほんの一部なのかもしれない。

彼女は何年も、牧野先生を想い続けていたのだ。
途中でボロボロと泣き出してしまう有理を家まで送り届け、自分のアパートに帰るA。
玄関までの廊下スペースを歩きながら電子キーを探していると、玄関前に座り込む人影が見えた。

「……えっ？！凪君？！」
「お帰り、Aさん」

Aの帰宅に気付き、顔を上げる凪。慌てて駆け寄るA。

いつからここに、いたのだろうか―――。