Code No 05 �� ページ39
「もしかして、牧野部長も結構ここにきているのですか？」
「来てるよ？俺は自分で料理はしないから。病院食以外は十夜か千景か凪かが作りに来てくれるし、それ以外はここで食べてる」
「そうなんですか？仰って下されば私、作りに行かせて頂きます！」
「あはは、ありがとう風見Dr！」
“凪”という単語に、再びびくりと肩を震わせたA。先程から、妙な動悸と冷や汗が彼女の身体を駆け巡る。冷たい視線を覚悟しながらふと前に座る有理を見ると、彼女は普段見ないような乙女な表情で、ここぞとばかりに身を乗り出していた。
(………え？ユーリちゃん―――？)
身を乗り出す有理を遮るように、千景が料理を運んで来て牧野に差し出した。
「とりあえず、立夏さん好きな物幾つかチョイスしますね！」
「ありがとう、千景―――いただきます！」
姿勢よく両手を合わせた後料理に箸を進める牧野の姿を、じっと見つめていた有理を小声で呼び止めるA。
「ちょっと…ユーリちゃん！お食事じっと見るのは失礼だよ？！」
「あ…ああ、そうね―――。なんか、居酒屋雰囲気が似合わないイメージだったから、意外というか、親近感湧くというか―――」
視線を逸らせて髪をかきあげる有理は、いつもの彼女よりしおらしい。
さっきまでため息と交互にビールを煽っていた手が、ぴたりと止まっている。
(まさかユーリちゃんって………)
はぁっと、愁いを帯びたため息を残す有理に、Aの妄想が現実味を帯びていく。
「叶わぬ恋だってあるのよ、A―――」
(はいぃぃ〜〜〜？！)
何かの悟りを開いたかのように重々しく語る有理に、Aの箸もすっかり止まってしまった。
結局、A達と同じタイミングで食事を終えた牧野に、奢ってもらう形となって一緒に店を出る。
「すみません、私まで―――」
「いいよいいよ、今日頑張ってくれたご褒美！今度のコメディカルスタッフへの勉強会も期待している。二人とも、気を付けて帰れよ？」
そう言うと、駐車場に止めていたバイクに跨り、夜道を走り去ってしまった。
「有難うございます！」
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