【Avatar Code（アバターコード）】 (ページ35)

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Code No　05　⑤ ページ35

「ほら、信号変わるから！」
「はいはい…次の信号待ちでするからいいもん」

両手をハンドルに戻しギアを1速に入れると、右手を煽る凪。Aを会社前に降ろすと、ひらひらと手を振って学校へと走り去った。

テールランプを見送って手を振るAの背後から、声が掛かる。

「バイクで送ってもらうなんて、珍しいね―――おはよう、望月さん。」

クールフェイスを崩さず声を掛けたのは、別の病院を担当しているMRの、橘京(たちばなきょう)主任。薬剤科卒業の彼は、薬の知識も豊富で営業成績もよく、上司達からの期待や信頼も厚い先輩だった。仕事ではあまり表情を崩さず、Aにとってはどちらかというと苦手な人でもあった。

朝から声を掛けられる程、親しく話をした記憶はなかったが―――。

「親戚の子が、泊りに来ているんです…その、家から通う方が高校に近いから―――」

高校生の弟…では、年が離れすぎている。酔った勢いで知らない子と同棲しているなどと、本当の事を話すわけにもいかない。

「………あの制服、聖倭大学附属高校の1年か―――。確か君の家から聖倭大学が近いんだったね。なるほど―――」
「あはは……」

咄嗟に出た嘘に、心を痛めながら、苦笑いでやり過ごそうとするA。

「今日は午後から聖倭大学病院へのプレゼン…いや、医局への勉強会だったな頑張ってくれ」
「あっ、はい！精一杯務めさせていただきます」

同じ営業の後輩として、勉強会の事を気にかけてくれていただけなのだろうか。橘は終始ニコリとも笑わず会社内に消えて行った。その背中を、深々と頭を下げながら見送るA。

……いけない、私も遅れちゃう！！

慌てて会社内に入り、タイムカードを切った。

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その日の勉強会を無事終え、打ち上げ代わりにとAは有理と共にいつもの居酒屋に来ていた…。
というよりは、連れ出されていた。

「高校生は流石にまずいでしょ？下手すりゃテレビにのるわよ？」

ビールを片手に顔をしかめる有理に、両大腿の上に拳を乗せ、黙って下を向くA。

「………ですよね―――」

Aの煮え切らない態度に、ため息を溢す有理。