【Avatar Code（アバターコード）】 (ページ29)

今日:2 hit、昨日:12 hit、合計:5,325 hit

Code No　04　⑤ ページ29

バームで可視化されたオートマタのソースコードを見ると、黒いソースコードはほとんど蒼色のソースコードに書き換えられ、消滅していた。黒いソースコードの中に埋もれて、一際輝く藍白色のソースコード…これがきっと、彼女の記憶の欠片…

これだけは―――何とか救いたい。

「ありがとう。だけど、私はコピー(複製)…消えても何も、問題ない。寧ろ、存在すべきではないものよ」

彼女の声が、寂しいセリフを吐く。

『Stern Baumを、繋いでくれて有難う』

そう言った彼女の声は、男性を形作ったオートマタに少女の姿を重ねた気がした。
20年前、父にNoah's Arkを渡したのは、彼女なのではないだろうか…そんな漠然とした思いが、海音の身体を突き動かす。

「Noah's Arkのこれからを…Stern Baumの繋いだ先を、君は見たいんじゃないか？」
「――――――…」

「だったら、消えさせやしない！俺が、見せてやる！君の言うStern Baum―――星の木の先を」

―――Stern Baumの先を、俺が見せてやる…

ああ。あの人と同じ言葉を、私に言う人がいたなんて。

「システムコール。メインプログラム開放…アバターコード入力 ID…”セナ＝クラーク”」

(セナ＝クラーク？)

バームで可視化された、白藍色のソースコードが幾重にも重なり、NO9を覆いつくす。彼女のプログラムをまるで待っていたかのように、吸い込んでいくNO9。ふとオートマタを見ると、ほとんどのソースコードが蒼い自己破壊プログラムに消されていた。

(まずい…このままでは―――)

海音はプログラミングを再開し、オートマタに残る白藍色のソースコードを無理矢理切り離した。次の瞬間、ブツリと音を立ててオートマタの電源が落ちる。自己破壊プログラムがオートマタの全てを呑み込み、消滅したのだ。

文字通り、鉄の塊(ガラクタ)となったオートマタは、その場に静かに崩れ落ちた。

海音は、両掌の上で輝く白藍色のコードの集合体(キューブ)を持ったまま、息を呑む。
掌に収まるような星形だったNO9は、少女のプログラムにより光る人型へと姿を変えた。

「アバターコネクト、NO9 Appropriation」