裏 Stern Baum ～Coffee Break～ (ページ7)

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Cups　１　con tenerezza　⑦ ページ7

(……知っているわけ、ないか―――。仮に知っていたとして、何かが変わるわけじゃない)

2人が店を出た後、誰もいなくなったピアノを、アルグレードは静かに見つめる。
少女が楽しそうに演奏する姿を、思い返しながら。

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店を出て、夕暮れ時の住宅街を歩く。

結局一日Aを連れまわしてしまった。碧は隣を歩くAに視線を落とした。

「………」
「どうしたの？」

碧の視線に気づいたAが、彼を見上げると、小さく首を振る碧。

「いや。今日は結構歩いたから、疲れさせてないかなって、思って―――」
「ふふっ！大丈夫よ、私そんなに弱い子じゃないわ！碧は、優しいね」
「好きな子には、優しくも大事にもしたいものだよ。一日付き合ってくれて有難う、とても楽しかったよ」

「ずるい。………そんなふうに言われると、恥ずかしい。私も楽しかったのに、言い難くなる」

視線をそらせ、頬を夕焼け色に染めるA。
その横顔を、碧は満足そうに見つめていた。

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「ただいま」

ラボの扉を開くと、研修から戻った識と立夏、大学から戻った白李と、ずっと家に籠っていた秋兎が一斉に玄関ドアを振り向いた。リビングに揃って待っていたようだ。

「こんな時間までどこに行ってたんだよ！昼起きたら二人ともいないから、僕暇してたんだよ！」

頬を膨らませる秋兎。

「デート、だよ。ポラリスには伝えていったぞ？」
「デート？！碧とAでか？！」
「なんだよ、悪いか？すっごく楽しかったぞ！な、A」

ウインクする碧にAも微笑みを返す。

「ええ、また行こうって約束していたのよね」

言葉足らずなAの説明に、どういう事だとヤキモキし始める織と立夏。
白李はAの荷物から珈琲豆を見つけた。

(そう言えば、豆切らしていたな…これを買いに出ていたのか。それにしては、遅くなったな。随分とA、楽しそうだし……)

白李の心にも、ヤキモチの靄が掛かる。

「そうだ、ハク！珈琲を淹れてくれない？」
「ああ、良いけど―――コスタリカか？」

Aから渡された豆の香りを確かめる白李。

「アナエロビックファーメンテーションですって！」
「マジ？！希少種じゃん！！どこで手に入れたんだ？」
「ふふっ！秘密よ～」

ガリガリと豆を挽く音と、芳醇な甘い珈琲の香りが、ラボに漂う。
濃厚な珈琲に、舌鼓を打つ6人。

宵の口に飲んだカフェインで眠気がなかなか来ないメンバーは、思い思いに長夜を楽しんだ。

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