裏 Stern Baum ～Coffee Break～ (ページ2)

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Cups　１　con tenerezza　② ページ2

タイミング悪く、珈琲豆を切らしていたようだ。
肩を落とす彼女を見て、碧はカウンター越しにキッチンに身を乗り出した。
打算が、彼の脳裏をかすめる。

「……A、今日はデートしようか？」

「デート？」

「そ、珈琲豆を買いに」

「……うん！」

普段は識達に阻まれ(？)二人で出かける事など滅多と叶わない。
かと言って、自然な流れで彼女をデートに誘う口実など、
早々見つかるわけでもない。

そう。これは、チャンスだ―――。

多少強引だとは思いつつも、碧はAを連れて街に出かけることにした。

後程起きてくるだろう秋兎に邪魔されぬよう、ポラリスには少し遅めに秋兎を起こし、
起きたらAと出かけている旨を伝えるように指示を残した。

こうして、守備よく珈琲ショップまでの道のりをデートとして楽しむ予定だった碧だが、
街に出て意表を突かれる。

そこら中に珈琲のカフェがある為だ。
ふらりと店に入って、直ぐに出てくるA。
その両手には、早々にテイクアウト用の珈琲が握られていた。

「はい、碧の分。この前ベネズエラの深煎りをミルクなしで飲んでたから、ブラックにしといた―――」

「あ、ありがとう…」

差し出された珈琲カップを、碧は苦笑いで受け取る。

折角こぎつけたデートなのに。
まさか、こんなにも早く目的を達成してしまうとは思ってもみなかった。

「この辺ってカフェ、多いんだね―――」

当たりを見渡すと、カップを片手に歩いている市民が意外に多く、
町のあちらこちらで珈琲店の看板を目にする。
ここカリフォルニア発祥と言われる、珈琲や紅茶で有名なあの店の看板も目立つ。

「アメリカ人にとっての珈琲は、イギリス人にとっての紅茶や、日本人にとっての緑茶と変わらないわ。
18歳以上のアメリカ人の約半数以上は毎日珈琲を飲むという統計だってある。
大抵の職場には珈琲マシンが完備されているのよ」

Aから手渡された大きめの珈琲カップを口にする碧。
いつもよりさっぱりと薄味の珈琲に、新鮮さを感じる。

「こっちの珈琲は浅煎り焙煎がスタンダードだから、ちょっと薄く感じるわよね……
うちのラボは珈琲メーカーがない代わりに、アルや私や…最近ではハクも手挽きで淹れるから導入していないけど、
希望があれば入れるわよ？」

大きなカップを口にしながら、Aがニコリと微笑み提案してきた。

「いや、Aやアル達に淹れて貰う方が美味しいし、香りもいい」