42.ハンドクリーム ページ42
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ハンドクリームが必要なほど乾燥した手を、こすりながら一歩踏み出す。
「っ、え、」
意を決して外に出たのに、頭には何の感触もなくて
はっと見上げると、そこには見覚えのある、黒い傘。
目「この雪、濡れるよ」
「め、⋯蓮くん」
目「また傘忘れたの?」
私に黒い傘を被せてくれていたのは、蓮くんだった。
蓮くんと会うのは鍋パ以来で、あんなことがあったから少しだけ緊張してしまう。
だって、言うなれば、私は蓮くんに告白されたようなもので。
「平気だよ」
目「濡れたら風邪ひくよ」
「私馬鹿だから風邪ひかないんだよ」
目「俺が平気じゃないから。Aちゃんが風邪ひいたら」
蓮くんは、ずるい。
恋愛偏差値の低い私が、こんなハイスペックなイケメンにこんなこと言われて平常心でいられるわけないのに。
あまりにもサラッと私の心を掴むから、遊ばれてるんじゃないかって心配もなくはないけど
でも、蓮くんがそんなことするような人じゃない、とも思う。
「⋯蓮くん、私」
目「⋯わかってるよ」
苦しそうに笑った蓮くんの目を、真っ直ぐに見つめる私の鼓動は
舞い降りる雪が地について溶けるよりもずっと速くて
ぎゅうっと、締め付けられるように痛かった。
目「わかってるけど⋯でも、それでも
諦めたくない。Aちゃんのこと」
少し潤んだ蓮くんの瞳に、私の顔と舞い降りる雪が映っていて
どうしようもなく、苦しくなった。
「わかってるって、何を⋯」
目「⋯北斗くん、のこと」
「北斗が、なに、?」
目「好きなんでしょ、Aちゃん⋯北斗くんのこと」
蓮くんにこんな表情、させたくなかった。
優しくて、あたたかくて、私を大事にしてくれるような人。
でも、こんな顔をさせているのは間違いなく私だ。
蓮くん、お願いだから
そんな苦しそうな顔、しないで
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くみ(プロフ) - 更新ありがとう御座います!拗らせ北斗くん大好きです!続き楽しみにお待ちしてます! (11月21日 13時) (レス) id: ac351487ee (このIDを非表示/違反報告)
まゆみん(プロフ) - 続き読みたいです。 (7月29日 16時) (レス) id: c9c9d458e3 (このIDを非表示/違反報告)
まゆみん(プロフ) - 早く結ばれてほしい、別れた理由知りたいです。 (2023年1月8日 16時) (レス) @page35 id: 541c7ab773 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:姫野 | 作成日時:2022年11月26日 22時