プロローグ ページ1
｢それで白血球さんがね!｣
羨ましいな｡
私は楽しそうに話す同期のAE3803、通称ミヤちゃんを見ながらそう思わずにはいられなかった｡
ミヤちゃんは赤芽球時代からの大親友だ｡迷子になりやすいけど、一生懸命お仕事を頑張っている｡優しくて、可愛くて、先輩達にも可愛がられていて、どんな人にも同じように接する｡
私とは違う｡
お仕事は好きだけど、優秀とは言いがたい｡ミヤちゃんみたいに可愛くないし、優しくもない｡私がそう言うと、何故かミヤちゃんはいつもそんなことないよ!と言ってくれる｡うん、やっぱりミヤちゃんはいい子だ｡
｢それはよかったね｣
私が1番ミヤちゃんに劣っていて羨ましく思うのは、誰とでもすぐ話せること｡
誤解を招かないように言っておくけど、私はコミュ障ってわけじゃない｡先輩とか細胞さんとは結構スムーズに話せる｡
私が言っている相手は、免疫細胞さん達のこと｡特に好中球さん｡
昔からずっと彼らに憧れてた｡いつかお友達になれたらって思ってた｡
でもいつからか、それは無理だって諦めてしまった｡
赤色骨髄の外の世界では、赤血球と白血球は関わってはいけないみたいだから｡暗黙の了解ってやつ｡
だから私は周りに合わせるように怖がるふりをしてきた｡心の中でごめんなさいって思いながら｡
でもミヤちゃんはその訳の分からないルールを突き破っていった｡
純粋にすごいと思う｡私にはできなかった｡今もまだできてない｡
憧れの好中球さんにまだ1回もありがとうって言えてない｡
｢私も好中球さん達とお話できる日がきたらいいな｣
私がそう言えば、ミヤちゃんはキラキラと顔を輝かせて私を見た｡
｢Aちゃんなら絶対大丈夫だよ!白血球さん達パッと見怖いけど、いい人ばっかりだから!｣
唯一私の憧れについて知っているミヤちゃんに言われたら、自信がついてきた｡
｢ありがとう、ミヤちゃん｣
ミヤちゃんは嬉しそうに口角を上げた｡あっ、眩しい｡
｢私、頑張ってみる｣
……とは言いましたけど｡
まさかこんなに早く細菌･寄生虫騒動に巻きこまれて｡
｢君、大丈夫?｣
驚きのあまり駆除完了後も床にへたりこんでいたら｡
｢立てる?｣
好中球さん達が私に声をかけてくれるなんて｡
誰が想像しました!?
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年9月19日 17時
