12-3 ページ37
うっわ｡
肺炎球菌が侵入してるだけじゃなくてすり傷までできてるの?すり傷が勃発すること多いんだけど、この世界マジで大丈夫か?
あれま、まだ血小板ちゃんたち着いてないんだ｡どおりでじゃんじゃん細菌が入ってくるわけね｡
あ、ミヤちゃんの想い人もいた｡ナイフかなんかで闘ってる｡頑張れ｡
｢ハハッ無様無様!｣
ちょっ、いきなり空中行くのやめろよ｡びっくりするだろ｡
えっ嘘、待って待って待って｡下暗いんですけど｡何あれ?あれが外界とつながってるヤバい穴?
｢その赤血球を離せ!｣
私が下の方に広がっている穴に意識を取られてる間に交渉が始まっていた｡
｢いいぜ、離しても?｣
｢ひっ……!｣
襟のところ掴まれて宙ぶらりんの状態に｡やめろやめろやめろ怖い!落ちる!
必死に肺炎球菌にすがるも、その格好のままで戻してくれない｡もう本当こいつ嫌い｡一生恨むから、なんなら呪ってやる｡
｢やめろ!｣
｢お前らが降参して、この世界を乗っ取らせてくれるんなら考えてもいい｣
……また私のせいで迷惑かけてる｡
こいつはきっと、好中球さんたちが降参したら多分彼らを惨殺する｡そしたら私のことも殺すだろう｡
……私1人の赤血球がいなくなったところで、この世界は止まらない｡
それなら｡
｢なっ!?｣
肺炎球菌を力の限り突き飛ばして、奴の手から逃れた｡つまり、私は今落ちている｡
わあ、あの肺炎球菌ヤケになって好中球さんたちに突っ込んでいった｡血しぶきが見えるから殺られたみたい｡よかった、これでちょっとは好中球さんたちも闘いやすくなるはず｡
あの時みたいに、全部スローモーションに見えるなあ｡落ちていく感覚も、見えた血しぶきも｡今までのことが頭の中を駆け巡る｡あはは、これが走馬灯ってやつ?
……ふとミヤちゃんや49さんたちの笑顔が頭をよぎった｡その途端、さっきまでの死ぬ覚悟が一気に揺らいだ｡
どうしよう、もう会えなくなると思うとものすごく胸が苦しい｡
……そっか、私、本当はまだ｡
｢死にたくないっ……!｣
そう分かった瞬間、スローに映っていた景色が加速し始めた｡
｢やだ、やだ、やだっ!まだ死にたくない!生きたい!｣
どんなに叫んでも、もう遅くなることはなかった｡助けを求めるように上に手を伸ばした｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年9月19日 17時
