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｢ってなわけなんです｣
｢へえ、そんなことがあったんだ｣
あらかた話し終えた頃には、もう分かれ道までやってきていた｡私は右、20さんは左｡名残惜しいけど、近いうちに報告会あるからすぐ会える｡
｢じゃあ20さん、また｣
｢うん｡Aちゃん、お仕事頑張ってね｣
｢20さんも頑張ってください｣
軽く手を振って20さんは私と真逆の方向へ去っていった｡ぐう、かっこいい｡イケメンは本当罪だな、イケメン罪で取り締まってやろうか｡
あーあ、荷物持ってたせいで手を振り返せなかったのが、本当に悔しいな｡片手で荷物持てるように、キラーTさんみたいに筋トレでも始めようかしら｡……絶対続かないけど｡
仕方ないから両手でしっかりと荷物を持ち直して前へ｡早く細胞さんに届けないと｡
……実は20さんに教えなかったことがある｡20さんを信用してないとか、そんなんじゃ全然ないけど｡
私、ミヤちゃんに気づかれる前にあの場から逃げたんだよね｡
今思うと馬鹿馬鹿しいんだけど、私はあそこにいちゃいけないって思った｡物語でいうならミヤちゃんはヒロインで、私はせいぜい通行人Aとかそこらへんの立ち位置だ｡通行人がヒロインを守るなんてご法度だし、守れるだけの力も私にはなかった｡そんな無力以外のなんでもない役があの場面にいてはだめだと、そう思ってしまった｡
幸い先生たちはミヤちゃんたちに気をとられていたから、逃げ出すのは簡単だった｡
何も知らないミヤちゃんは私にあったことを話してくれた｡私は素知らぬ顔でそれを聞いて｡本当は知っていたくせに｡
いまだに逃げたことはバレてないと思う｡それに、多分これからも｡いや、バレたからなんだって話なんだけど｡悪いことしたわけじゃないしね｡ただなんとなーく知られたくないだけで｡
……お、着いた｡
ピンポーン｡
｢酸素お届けにまいりました｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年9月19日 17時
