白紙4枚目 ページ6
「A、お見舞いに来たでー」
「いつもありがとうございます、坂田さん...とそちらの方は?」
病室のベッドの上で本を読んでいるAに声をかけると、彼女は本からこちらに視線を移した。俺の隣に並ぶうらさんを見て一瞬動きが止まった気がしたけど、すぐにいつものふわりとした笑みを浮かべて声をかけてくれる。
「紹介するな!この人はうらたさん。俺の友達兼同業者で、めっちゃ優しいいい人なんやで。
こっちはA。見ての通り入院中で、最近俺がよくお見舞いに行ってる相手」
「うらたです。よろしく」
「白星Aです。こちらこそよろしくお願いします」
2人のことを簡単に紹介する。Aはいい子やしうらさんは優しいからすぐに仲良くなれると思ってた。その予想はやっぱりあってたみたいで、2人は楽しそうに会話を始めた。
「Aはどこで坂田と知り合ったの?」
「えっと......私の記憶ではこの病室なんですけど、実際は私が階段から落ちて気を失っていたところを坂田さんが助けてくれたみたいなんです。その後も意識が戻るまでお見舞いに来てくれて」
「へぇ。じゃあ、坂田が命の恩人ってわけね」
「そうなんです!坂田さんは見ず知らずの私を助けてくれて、その後もお見舞いに来てくれてるので、記憶がほとんどない私にとってはとても心強い存在で、いくら感謝しても足りません」
「記憶がない?」
Aの言葉に顔を顰めたうらさん。そうや、それについてはまだなんも話してないんやった。俺に"聞いてねえぞ"と視線で訴えてくる。そんなうらさんに"ごめん"とジェスチャーで返す。
「あっ、そうでした。そのことについてお話してませんでしたね。私、所謂思い出と呼ばれる記憶だけきれいさっぱり忘れてしまってるんです」
俺らがそんなやり取りをしていることに気付かないAは、さらりとまるでなんとも思っていないかのように、自分の置かれている状況を告げた。
「辛くないのか?」
うらさんが口にした疑問は、俺も思っていたことで。あの日はあんなにも不安に押しつぶされそうな表情をしてたのに、なんで今はこうも平気そうな顔をしていられるんやろうか。
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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2021年6月16日 7時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおい | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aoihomupe/
作成日時:2019年10月11日 3時