馬鹿と天才は紙一重 (ページ47)

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✕ No side

試合が終わり、会場が興奮の熱気に包まれていた時。

試合中、ベンチ横で車椅子に座っていたアナリストの八雲。

彼は最終セット車椅子から離れ、立ち上がって
コートに立つ選手達を応援していた。

勝った瞬間。

彼は周りが手を突き上げて喜ぶ中、一人左手で目を押さえていた。

その背中は小刻みに揺れ、震えているのが分かった。

石川「A！！」

石川祐希がみんなの輪から離れて八雲の所へ駆け寄ってきた。

そして強く抱き締めて腰を支え、輪の方へ連れていった。

✕

走ってきた祐希に抱きしめられた。

石川「勝ったよ」

「ちゃんと見てたよ、お疲れ様」

石川「ほら、みんなのとこ行こう？」

と言って祐希は車椅子にかけてあった杖を取って
俺に渡し、俺の腰に手を回した。

そしてゆっくり歩いてくれてみんなのもとへ。

柳田「A」

みんな歩いてきた祐希と俺の方を向いて笑ってくれた。

その笑顔を見て涙が止まらなくなった。

石川「なんで泣くんよ」

「……みんな笑ってる」

石川「そりゃ勝ったもん」

清水「やっと泣いたな、A」

「…うるさい邦さん言わないで」

邦さんは俺の身長に目線を合わせて笑い、頭を撫でた。

清水「よう頑張ったよ」

「…うん、邦さんもね」