馬鹿と天才は紙一重 (ページ34)

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一人になった病室から叫びが聞こえた夜があった。

リハビリが上手くいかず、感覚のない右足を
左手で叩いたり引っ掻いたりしていた。

「なんで、なんで動かないんだよ！！！」

「動けよ！！！」

叩かれる右足は赤く腫れ上がるが、彼にはその痛みさえも感じない。

今までの長いバレー人生で一度たりとも大きな怪我を
した事がない八雲にとって、
この怪我は想定外であり大きな挫折だ。

清水「A、会えますか？」

看護師「すいません。八雲さん、面会拒否してて。」

清水「…そうですか。
じゃあAに伝えてくれませんか？」

看護師「はい。」

清水「待ってるから。そう伝えてください。」

清水邦広だけではなく、関田や山内、高橋など
多くの選手達が彼の病室を訪れたが、

その全てを八雲は拒否した。

差し入れられる花や食べ物も受け取らず
一人で辛いリハビリや追いつかない気持ちに耐え続けた。

2015年、16年

イタリア代表アナリストに就任し、イタリアを大勝利に
導いた天才八雲A。

2017年

各国が代表選手やスタッフを発表し、次々と大会が行われていく。

その中に彼の名前は当たり前になく、
彼は一人で自分の向き合い続けていた。