馬鹿と天才は紙一重 (ページ33)

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あの凄惨な事故から数ヶ月。

1ヶ月に渡る長い眠りから覚めた八雲Aには、
それからも悲しく、酷い運命が待っていた。

左側脳出血による右半身不随。

右半身が動かなくなり、バレーは愚か日常生活さえも
自由に出来なくなってしまった。

八雲は、空虚を眺めたりする日々が1週間程続いたが、
現役選手を引退することを決意した。

彼の所属先トレンティーノは八雲の意志を受け入れ、
八雲Aの現役引退を発表した。

それには世界中からたくさんのメッセージが集まった。

選手からもファンからも他競技の選手からも。

彼がどれほど愛されていたか。
彼がどれほどの技量を持った人間であったか。

それが身に染みて分かった。
そして、彼を生きながらに失う惜しさが分かった。

それから1週間。

彼は日本にいた。

車椅子に乗ってイタリアを出国し、日本へ帰国。

イタリアでは満足のいくリハビリができないため、
日本で整体を交えながらリハビリを行うことにしたのだった。

「あ"あぁぉあ」

声にならない叫びは狭いリハビリルームに響く。
動かない痛みは物理的に感じるものでは無い。

右手も右足も、彼が事故で負った怪我は、
動かなくなっただけではなく彼の心にも大きな損傷だった。