BAR Adler_3 ページ3
黒いロングヘアの小柄な女性。
ちらりと店内を一瞥し、
一瞬、ほんの少しだけ、表情を歪めた、気がした。
『…』
慣れたように、カウンターの隅、
降谷の部下の横に座る女。
あの時、
A町で見かけた、
Aの、姿だった。
「…、を。」
降谷からは、
隣のテーブル席に座るカップルを1組挟んでいるため、
少し聞き取りづらいが、バーテンダーに注文をしているようだ。
先ほど一瞬表情を変えた気がした。
(…気づかれた、のだろうな)
薬 物の取引にも細心の注意で警戒しながら、
直接、Aに視線を送ることはせず、
彼女にも、注意を払う降谷。
すっと、
透き通ったブルーのカクテルグラスが彼女の前に運ばれる。
「…小石川、雅哉さんは、最近こちらに来ていますか?」
(…小石川、雅哉?)
少し聞き取りづらくはあったが、
そう、バーテンダーに話していたAの声が、
降谷の耳に入ってきた。
カウンターに座る部下にさりげなく厳しい視線で、
警戒を続けるよう指示をしたあと、
少し、慎重に会話に耳をすませる。
「…さぁ。」
「お兄さん、ですよね?
あなたの。」
「アンタ…、誰。
…警察?」
「いえ。
小石川さんに、雅哉さんに、以前色々とお世話になったもので。
お会いできたら、と」
「…へぇ。」
バーテンダーは、特に興味なさそうにAと話しているようだ。
「以前、ここで一度お見かけしたので、
お会いできるかな、と思いまして。」
「…来てねぇよ。」
「そう、ですか。」
降谷はちらりとカウンターに視線をやるが、
Aはそれ以上追究することはなく、
その後、静かにグラスを傾けていた。
――店内には、相変わらず怪しい様子は見られない。
その後、
10分ほどでAは静かに店を去っていった。
(…“小石川雅哉”という人物について、
聞きに来ただけ、ということか。
何者、だ。)
しかし、今の状況で、
Aの後を追うことは当然許されず、
そのまま何も無かったように、
降谷もまた、静かにグラスに口を付けていた。
そしてそのまま1時間が過ぎ、
その後も店の外で監視を続けるも――
予定されているという”取引”は、
その日、確認されることは無かった。
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white12(プロフ) - さちさん» >さち様 とても嬉しいコメントありがとうございます!大変励みになります。更新にはややムラがあり申し訳ないですが、これからもご愛読頂けたら嬉しいです! (2019年7月23日 8時) (レス) id: 1425135a30 (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になりました。よろしくお願いします。 (2019年7月23日 2時) (レス) id: 546dffdabd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月21日 10時