逃れられない想いとともに。(4)【松田陣平】 (ページ9)

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重ねた謝罪_9 ページ9

では、一体誰のことを言っているのか。
あるいは、隠しているだけなのか。

「…悪りぃ。
話したくねぇこと、聞いたな。」

『いえ…』

飲み終えたカップをテーブルに置く松田に対し、葵は未だカップには手をつけていない。

『あの…痛みますか？』

「ん？」

『足…、あのとき、刺されたんですよね…？』

松田の足にちらと目をやる葵。

「…あぁ。大したことねぇよ。気にすんな」

口元を緩めて葵にそう答える松田だったが、
葵は眉をひそめて押し黙る。

『…ごめん、なさい』

「だ、だから、
アンタのせいじゃねぇって言ってんだろ…」

再び謝罪を口にし始める葵に、
松田は少し苛立った様子を見せた。

『で、でも…

あの時…

ごめんなさい…』

またも肩を震わせながら俯いて謝罪を繰り返し始める葵に、
松田は複雑な表情を浮かべる。

『…ごめん、なさい…

…っ』

再び嗚咽を漏らし始めた葵を前に、
松田はゆっくりソファを立ち上がり、
葵に近寄るも、彼女は俯いたまま顔を上げない。

「だから、もう、良いって…」

松田はため息をつきながら、
一瞬戸惑ってから、震える葵の肩に手を置き落ち着かせようとするが、
葵の嗚咽は止まる気配が無い。

『…っ

ごめ…ん…なさい..っ』

松田が、子どもをあやすように、
その背中をそっとさするも、
葵の嗚咽は少しずつ大きくなって。

「…お、おい。結城。
本当に、アンタのせいじゃねぇって…」

『わた、しが…

あの時…

ごめん…なさい…

っ… ひどい、こと…言って…

ごめ…ん、なさい… っ…

呼び..だしたり…しなければ…』

嗚咽を交えながら、
謝罪をやめない葵。
その呼吸はどんどん乱れ始め、
肩が大きく震え始めた。

(…ひどいこと…？
呼び出す…？)

松田には、記憶にない話だ。

『ごめん…なさい…っ』

「…なぁ。アンタ…

“誰”に謝ってんだ…？」