逃れられない想いとともに。(4)【松田陣平】 (ページ7)

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重ねた謝罪_7 ページ7

「…、大丈夫か？

その…、
アンタが爆弾を使うような犯人を憎む理由って、父親のことがあるから…じゃねぇのか？」

『そう、ですね』

「殺したいほど憎い犯人って、
あの事件の犯人、のこと…か？」

“犯人を、殺したいほど憎んだこと、ありますか”

観覧車で葵から問われたことを思い出す。

『…いえ。違いますよ』

一瞬目を伏せるも、松田に淡々とそう答える葵。
先ほどまで、小さく嗚咽を漏らし、
肩を震わせていた姿とは、まるで別人のように。

「…」

『…松田さんも前に言ってましたよね。
強く、憎んだことがある犯人がいるって、
殺したいほど憎んだ犯人がいるって』

観覧車で、確かに松田はそう答えた。
それを、聞きたいのだろうか。

「…あぁ、そうだな」

『あ、すみません。こんなこと、聞いてしまって…』

「いや、

…身勝手な動機で犯罪を犯す犯人も数えきれねぇほど見てきて、
怒りを覚えたことなんて、数えきれねぇけど。

死ぬほど憎んだのは、
…大事なダチを殉職させた犯人だな。

爆弾を使った、卑劣なヤツだった」

それは、
葵に話すなど考えもしていなかった、松田の過去。
松田にとって、
決して忘れることの出来ない、過去。
目に焼き付いて離れない光景が、頭に浮かぶ。

『…ごめんなさい』

聞いてしまったことを、
話させてしまったことを、小さな声で謝罪する葵に、
松田は、複雑そうに表情をわずかに緩めた。