逃れられない想いとともに。(4)【松田陣平】 (ページ43)

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タバコの匂い_5 ページ43

それでも、
自分の中の何かの感情が入り混じり、

“葵が、その存在が、思考を埋め尽くすのは何故か”

その問いへの葛藤は、どうしても消せなかった。

そして、
それは、どうやら、
彼女の言う、タバコによる頭の整理、では、解決出来ないようだ。

夜遅くに帰宅する葵の姿。
ストーカーに、
犯人に、対峙する葵の姿。
嗚咽を漏らして泣きじゃくる、葵の姿。

“頭の整理”と言って、
吸わないタバコの煙をくゆらす葵の姿。

それらが頭をよぎった。

(…。)

そして、
ふっと、顔を上げ、
手にしていたタバコを灰皿へと捨てる松田。

(…もう、色々考えんのめんどくせぇ。)

放っておけない、
その事実はシンプルで、明らかなものだ。

会話を交わそうが、
沈黙が流れようが、
彼女が隣にいれば、
松田自身、何故か安心感を感じる、
という事実も。

喫煙所を出ると、
松田はそのまま警視庁を飛び出した。

そして、その先の路地で視界に入るのは、
先ほどまで隣にいた人物の背中。

「結城…！」

ゆっくり振り向いた葵の姿に、
少しだけ、鼓動が早くなるのを感じながら、
松田は彼女に駆け寄った。

(END)